研究課題/領域番号 |
13J02473
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
廣岡 義博 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1) (80780981)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イネ / 非破壊計測 / プラントキャノピーアナライザー / ラオス / カンボジア / 葉面積 / 生育環境 / モデル |
研究実績の概要 |
人口が急増しているアジア・アフリカ地域ではイネの収量向上が求められているが、そのために必要とされている農家圃場の情報が不足している。そこで、非破壊計測と簡易モデルを利用することで、イネの生育環境及び管理方法に関する情報を収集する手法を開発することを目的としている。本年度は下記の研究を実施した。 1.イネの葉面積分布の定量化 2013年度には施肥試験を行い,非破壊計測器によるイネ群落の層別測定をおこなうことによって,データを収集した.これに加えて,2014年度は,栽植密度の違いが葉面積分布に与える影響を解析するために,栽植密度試験を行った.本年度は2年間で得られたデータから,施肥や栽植密度が葉群分布に与える影響についての解析を行った.本年度の解析から、①簡易モデルを利用することで葉群分布の定量化が可能であること、②品種、施肥による葉面積分布の違いを検知できること、③葉面積分布の品種間差が乾物生産に影響を与えていることが示唆された。 2.東南アジアの農家圃場における生育環境の評価 2013年度には、ラオス農家圃場におけるイネの生育を非破壊計測によって経時的に測定し、さらに収量調査を行った。これに加えて、衛星画像データを得た.2014年度は、カンボジア圃場において、2013年度と同様のデータ、さらに、農家のインタビュー調査、雑草・水分状態調査を行い,2013年度より詳細な農家圃場データを収集した。本年度は。これら2年間で得られた東南アジアの農家圃場データの解析を行った。本年度の解析から、①ほとんどが無施肥圃場であるラオス農家では、葉面積成長速度と土壌養分の間に関係性があり、非破壊計測器による生育環境の評価が可能であること、②衛星画像データによる葉面積成長速度の推定可能性、③施肥圃場が多いカンボジア農家における非破壊計測による生育環境の評価には施肥量を考慮する必要があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ラオス農家圃場における非破壊計測の測定値と土壌養分量の関係性が明らかとなってきており、生育環境の評価手法が確立されつつある。また、当初は予定していなかった衛星画像が手に入ったことにより、生育環境の評価方法を広域に展開できる可能性が示唆された。 また、葉面積分布を非破壊計測によって、経時的にモニタリングする研究に関しても、簡易モデルを利用した定量化の方法が確立されつつあり、これらによって葉面積分布の違いが乾物性に与える影響についても解明されることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
ラオスの農家圃場における調査データの解析結果より、非破壊計測器による生育環境の評価およびこれらの広域展開の可能性が示唆されてきた。しかしながら、これらの地域では栽培管理がほぼ一律であり、栽培管理が多様なカンボジアの農家圃場において、インタビュー調査も含めたより詳細な解析を行うことが必要であると考えられ、2か年のデータを統合することによって、より適用範囲が拡大された生育環境の評価手法を確立する予定である。 葉面積分布を定量化する方法が確立され、これらをもとに乾物生産性に与える解析を行ったが、これらは単年度の結果であるため、今後さらに年次を増やし、また、栽植密度の違いも考慮する予定である。さらに、これらの結果を光合成モデルと組み合わせることによって乾物生産性に与える影響を解明する予定である。。 また、本年度は最終年度であることから、上記の結果に、2013年度に行った葉群パラメータの推定手法を含め、非破壊計測を利用したイネの生育環境の評価手法の開発として取りまとめを行う。
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