近年、アジア・アフリカ地域では、水および土壌環境の制限により生産性が非常に低いことが問題になっており、それらの改善が強く望まれている。しかしながら、その基礎となるべき農家圃場におけるイネの生育量に関する情報は現在でも非常に乏しい。そこで、本研究では、非破壊的にイネの生産性関連形質を計測し、これらの計測値から生育環境及び農家の管理方法についての評価を行うための手法を開発することを目的としている。 そこで、本年度は、以下の2つの解析をおこなった。 ① 昨年度までに、東南アジア農家圃場において、非破壊計測によるイネのLAI動態の評価を行い、それに基づき、移植日の推定や生育環境の評価手法を開発した。本年度はカンボジア・プルサット州における農家へのインタビューと植物体の実測データを網羅的に解析することによって、生育環境だけではなく管理方法の効果を定量化することにも成功した。さらに本年度はこれらの評価手法を国内の農家圃場においても検証した。ここでは評価手法を広域展開するために、ドローンを利用した評価と現在までの評価の比較検証も行った。 ② 昨年度までに、京都大学の試験圃場において施肥試験・栽植密度試験をおこない、異なる品種におけるLAIと葉身窒素濃度の垂直分布を経時的にモニタリングした。本年度はこれらの経時的モニタリングから得られたデータを定量化するための手法の開発を行った。具体的には、イネ群落の層別測定値と積率モデルを用いることによって、LAIの垂直分布における中心、分散、歪み、尖りをそれぞれパラメータ化し、それによって群落構造に関する品種間差や管理方法による効果を定量的に明らかにした。 本研究によって、非破壊計測データと簡易モデルを用いた農家圃場の生育状態および詳細な群落構造を定量化するための手法を開発することができた。
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