研究課題/領域番号 |
13J02481
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
桂 廣亮 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | インフルエンザウイルス / 炎症 |
研究概要 |
インフルエンザウイルスをマウスに感染させると肺に強い炎症が起きる。インフルエンザウイルスによってどのように免疫が誘導されるかは精力的に調べられてきたが、一度惹起された免疫応答の収束メカニズムは未解明な部分が多い。そこで、インフルエンザウイルス感染の回復期に発現上昇する遺伝子をマイクロアレイにて網羅的に解析し、その中からTIGITという分子を見出した。TIGITはT細胞などに発現する抑制性受容体であり、樹状細胞に発現しているCD155と相互作用することで、炎症収束に重要なIL-10の産生を亢進することが分かっている。以上の理由から、インフルエンザウイルス感染による炎症収束時におけるTIGITの役割を解明するために研究を行っている。 始めにTIGIT発現細胞の同定と動態解析を行った。非致死量のインフルエンザウイルスをC57BL/6マウスに感染させ、フローサイトメトリーを用いてTIGITを発現している細胞を調べたところ、感染6日目から15日目にかけてのTIGITを細胞表面に発現したCD4^+、CD8^+T細胞が肺に集簇していることが確認できた。また、感染15日目の肺を用いて凍結切片を作製し、TIGIT発現細胞の分布を調べたところ、免疫細胞が集簇している領域にてTIGIT陽性細胞が存在することが確認された。 次に、インフルエンザウイルス感染におけるTIGITの機能解析を行うために、TIGIT欠損マウス(TIGIT KOマウス)を用いて感染実験を行った。10^3PFU及び10^2PFUのインフルエンザウイルスを感染させ、体重変化と生残率を測定したところ、野生型マウスとTIGIT KOマウスで有意な差はなかった。また、非致死量のインフルエンザウィルス(50PFU)を感染させ、気管支肺胞洗浄液中に含まれる種々のサイトカイン量を測定した。TIGIT陽性細胞の肺への集積と顕著な体重減少が観察される感染7日後に気管支肺胞洗浄液を回収し、サイトカイン量を測定したところ、過去の報告においてTIGITの刺激が産生に関与していると言われているIL-10やIL-6、TNF-αやIFN-γなどの産生量に違いは見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は計画通り進展している。TIGIT KOマウスを用いたインフルエンザウイルス感染実験にて、病態やサイトカイン産生量に関して野生型マウスと有意な違いは見られなかったが、ウイルス感染後に肺に浸潤してくるそれぞれの免疫細胞に関してより詳細な解析を行うことで、TIGITの機能を明らかにできると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
TIGITはT細胞に発現する抑制性受容体であることから、TIGIT KOマウスではT細胞の過剰な活性化が起きている可能性が考えられる。今後の推進方策に関しては、まずT細胞の活性化や分化状態に関してフローサイトメトリーやリアルタイム定量PCR法を用いて検討していく。また、ウイルス感染後にTIGIT KOマウスの肺に浸潤してくる各種免疫細胞の数を測定し、野生型マウスとの比較を行う。
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