研究課題/領域番号 |
13J02482
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安宅 未央子 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 分解呼吸 / 土壌呼吸 / 自動チャンバー / 連続測定 / 枯死有機物 / 落葉層 / 土壌炭素動態 / 降雨応答性 |
研究概要 |
本研究は、個々の枯死有機物(落葉・枯死根・枯死木)の分解呼吸量と、それぞれに固有の環境要因・基質特性との関係を定量化し、各基質の分解過程を考慮に入れた森林の枯死有機物分解-土壌炭素蓄積プロセスの解明と定量的評価を目的とする。 本年度は、分解呼吸の特に重要な制限因子である含水比に着目し、下記の2つの課題を遂行した。 1. 静電容量センサーを用いた野外での落葉層含水比の連続測定を可能にした。 分解呼吸速度の含水比に対する応答性(降雨応答性)を調べるためには、短時間間隔で測定された落葉層含水比データを必要とする。落葉層は土壌層と比べて不安定な構造をしているので、プレート型の水分センサーの周りに落葉を完全に密着させ、それを落葉層の下層と上層に設置し、センサー周りの含水比動態の安定した観測を可能とした。 2. 落葉分解呼吸速度の連続測定を可能にし、環境応答性を調べた。 落葉層のみからのCO_2放出速度の連続観測を試行するため、土壌有機物や根といった落葉層以外のCO_2放出源を除去し、マッフル炉で焼いたマサ土と交換した操作実験区を設けた。実験区内での落葉分解呼吸速度の連続観測と並行して、温度と1で考案したセンサーによる含水比観測を行った。土壌表層に位置する落葉層の短期的な含水比の変動が、分解呼吸速度の時間変動に強く影響していることが示された。分解呼吸速度のピークは、降雨時もしくは降雨後1日目に観測された。降雨後2~4日後には降雨前と同じ呼吸速度まで減少した。分解呼吸速度の強度は温度に追従し、夏に高く・冬に低い値を示した。さらに土壌呼吸速度との比較から、落葉分解呼吸/土壌呼吸速度は、降雨イベントに従って0~49%のダイナミックな変動を示した。年間落葉分解呼吸速度の算出や土壌呼吸の時間変動プロセスを理解するためには、降雨イベントに対する落葉分解呼吸速度の時間変動を観測することが非常に重要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野外における連続観測から分解呼吸速度と環境因子の関係を定量的に評価した。さらに、他樹種落葉のフラックス観測から、リターの質によらず樹種間での呼吸速度―環境因子の関係はほとんど同様であることを示した。これらの進行程度は本研究の実験計画に即している。但し、集中豪雨の影響により、夏の十分な観測データを得ることができなかったため、次年度も継続して観測する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は分解呼吸速度の連続観測を継続して行うことによって不足分のデータを補い、その成果を国際誌に発表する予定である。さらに分解呼吸の測定と並行して、流域内のリターの供給量・堆積量・土壌への炭素蓄積量、さらにはそれらの空間分布を定量することによって、空間分布を考慮したリターの分解・蓄積プロセスを明らかにする。これらの情報から抽出された分解特性を現在開発が進められている土壌炭素動態モデルに組み込み、多様な枯死有機物の分解過程が土壌炭素収支に与える影響を定量評価する予定である。
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