研究課題
本研究は核融合、原子炉、加速器等の極限環境下で使用可能な人工ダイヤモンド放射線検出器、半導体デバイスの開発を目指すものである。平成26年度は平成25年度に引き続きダイヤモンド結晶中の電子の電荷捕獲改善、磁場閉じ込め核融合におけるDT中性子エネルギースペクトロメータ応用を想定した検出器の評価試験を行った。電子電荷キャリア輸送特性改善に関しては窒素不純物低減のため合成装置真空度改善、ならびに結晶中の欠陥低減のため原料ガスであるメタン濃度を従来の1%から0.2%まで低減し合成を行った。得られた結晶はカソードルミネッセンス測定において結晶の完全性を示す自由励起子再結合発光が従来合成条件試料と比較し最大10倍を達成した。さらに、これまで観測されていた構造欠陥に関連した発光や窒素に関連した発光は観測されず極めて結晶性の高い試料となった。α線誘導電荷量分布測定においては正孔101.5%,電子101.9% エネルギー分解能、正孔0.38%、電子0.38%となり電子に対する電荷キャリア輸送特性を大幅に改善した。DT中性子エネルギースペクトロメータ応用を想定し日本原子力研究開発機構核融合中性子源(FNS)において行ったDT中性子照射試験では中性子エネルギー拡がりからプラズマイオン温度を見積もる際に必要な12C(n,α)9Be反応に対するエネルギー分解能はビーム軸から95度に設置した場合、実測値で1.7%を達成した。三重水素吸蔵Tiターゲット内での中性子の減速、散乱によるエネルギー拡がりを考慮するとダイヤモンド検出器固有のエネルギー分解能は0.77%となりこれまでに天然ダイヤモンドにおいて報告されている最高値1.95%を大きく上回り、世界最高のエネルギー分解能を達成した。
2: おおむね順調に進展している
電子に対する電荷キャリア輸送特性改善に成功し、現状で世界トップクラスの単結晶CVDダイヤモンド合成に成功したことまた、DT中性子エネルギースペクトロメータにおいてもプラズマイオン温度計測に必要なエネルギー分解能を達成したため。
本年度は電子の電荷収集効率、エネルギー分解能に関しては正孔と比較しほぼ同等の値を得た。しかし、移動度μ、キャリア平均寿命τの積は正孔と比較しいまだに1桁低く、いまだに改善の余地を残しておりその要因としてはリフトオフ法による単結晶CVDダイヤモンド合成プロセスの一環であるイオン注入による合成基板への欠陥生成が一つの候補として考えられる。そのため今後は電子電荷キャリア輸送特性のさらなる改善として導電性基板上、イオン注入後アニールを行った基板によるCVD合成・電荷キャリア輸送特性評価によりリフトオフ法によるイオン注入の影響評価を行う予定である。また、半導体デバイス作製の試みとして、アバランシェ増幅可能な電極パターン作製を行い、増幅率や温度依存性について評価を行う予定である
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
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doi:10.1016/j.nima.2014.12.036
http://labs.eng.hokudai.ac.jp/labo/higedon/?page_id=23