研究概要 |
近年, 当研究室において, アメフラシ由来の発がん促進物質・debromoaplysiatoxin (DAT)の骨格を利用して, 発がん促進活性を持たないPKC活性化剤であるaplog-1が開発された. 本化合物は, 数種のがん細胞株の増殖を顕著に抑制することが明らかになった. また, aplog-1のスピロケタール部分の10位にメチル基, あるいは12位にジメチル基を導入した誘導体(10-Me-aplog-1,12,12-diMe-aplog-1)は, aplog-1と比べて高いがん細胞増殖抑制活性を示した. 一方で, それらの発がん促進活性はaplog-1と同様にほとんど認められなかった. 特に, 10位メチル基が細胞増殖抑制活性を顕著に増大させた. 本年度は, 10-Me-aplog-1および12,12-diMe-aplog-1よりもさらに優れた誘導体を得ることを目的として, aplog-1のスピロケタール部分の4位と10位にメチル基を導入した新規誘導体(4,10-diMe-aplog-1)を合成した. まず, マウス皮膚発がん二段階試験との相関性が高いHL-60細胞を用いたsuperoxide産生試験を行なった. その結果, 4,10-diMe-aplog-1は10-Me-aplog-1よりも高いsuperoxide産生能を示した. この傾向はマウス耳炎症活性とよく対応していた。これらの結果を受けてマウス皮膚発がん二段階試験を行なったところ, 4,10-diMe-aplog-1は10-Me-aplog-1とは異なり, DATが発がん促進活性を示す1.7nmolの5倍量投与により, 有意な発がん促進活性を示した. 一方で, 4位のメチル基は, 多くのがん細胞の増殖抑制活性を低下させることが明らかとなった. 以上の結果より, 10位ならびに12位にメチル基を有する誘導体が, 抗がん剤シードとして最も有望であると考えられた. ごく最近, 10,12-diMe-aplog-1の合成が完了した.
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今後の研究の推進方策 |
最適であると考えられる10,12-diMe-aplog-1を用い, 作用機構を解析する. まず, 10,12-diMe-aplog-1の細胞増殖抑制作用に対する各PKCアイソザイムの寄与を, siRNAを用いたノックダウンにより検証する. 万一10,12-diMe-aplog-1の細胞増殖抑制作用がPKCアイソザイムの関与のみで説明できなかった場合には, 半田磁性ビーズを用いてPKC以外の細胞内標的分子を探索することも視野に入れている.
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