研究課題/領域番号 |
13J02531
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渡邉 智昭 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乱流 / 化学反応 / 流体工学 / 混合 |
研究実績の概要 |
本研究は,(1)液相乱流における微小スケールの濃度拡散場および化学反応場の特性の解明と,(2)確率密度関数法に基づく反応性乱流に対する数値計算手法の構築を目的として行われている.以下に,本年度の研究の進捗について述べる. 研究目的(1)に関して,昨年度に行われた液相噴流における反応性物質濃度と速度の同時計測の結果の詳細な解析を行った.反応性物質の平均濃度の輸送方程式を解いて反応場を予測する場合,支配方程式中に現れる平均反応速度および乱流フラックスをモデル化する必要がある.本実験により得られた噴流中の平均反応速度と乱流フラックスの分布を既存のモデルによる予測値と比較することにより,過去に提案されたモデルの評価を行った.さらに,混合分率に対して条件付けした統計量を詳細に解析し,反応性乱流の数値計算手法の一つであるConditional Moment Closure法で用いられるモデルの検証を行った.その結果,混合分率に対する条件付平均濃度を用いることで液相噴流中の反応場の反応速度を精度よく予測できることが明らかとなった.上記実験に加えて,昨年度に行った二次元噴流中の反応場の直接数値計算のデータベースを解析し,噴流中の乱流領域と非乱流領域を分ける界面領域の特性と反応性物質の拡散場の関係を明らかにした. 研究目的(2)において,乱流物質拡散場を精度よく予測する数値計算手法が重要となる.そこで,本年度はApproximate Deconvolution Model (ADM)を用いたLarge Eddy Simulation (LES)の数値計算コードを開発した.この数値計算コードを用いて,フラクタル格子によって生成された乱流中の物質拡散の数値計算を行った.数値計算結果を実験値と比較した結果,ADMを用いたLESにより格子乱流の統計的性質を精度よく予測できることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
液相乱流中で反応性拡散物質の瞬時濃度を高い空間分解能で計測できる濃度測定システムと流れ場・反応場の支配方程式を数値計算により解く直接数値計算法の数値計算コードを初年度に構築した.本年度には,これらを用いた実験や数値計算結果から,乱流中で生じる化学反応の様々な性質や過去に提案されてきた数値計算モデルの妥当性が明らかとなった.こうした成果は既に多数の学術論文や国際会議で発表されているため,研究は当初の計画以上に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
当該年度において, Approximate Deconvolution Modelを用いたLarge Eddy Simulationの数値計算コードが開発され,その計算手法の有効性が示された.今後はこの数値計算手法に確率密度関数法などのラグランジュ的計算手法を組み合わせることにより,化学反応を伴う流れ場の予測手法の確立を目指す.ここでは,本研究の初年度に提案された分子混合モデルと混合時間スケールモデルを用いる.この計算手法による反応性物質拡散場の予測結果を今年度までに行われた実験や直接数値計算の結果と比較することにより,計算手法の有効性について検討する予定である.
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