研究課題
私は、日本の赤外線天文衛星「あかり」によって得られた、中間赤外線(9, 18 micron帯)diffuse全天マップの作成、及びそのマップを用いた全天の有機物質の進化に迫る研究を行っている。特に「あかり」9 micron帯の観測は、多環芳香族炭化水素(PAH)と呼ばれる、銀河系や近傍銀河において遍在性の高い有機物質からの放射をトレースしており、この波長帯の全天マップを作成することは、星間空間中の有機物質を研究するにあたって非常に重要である。私は「あかり」データ処理・解析チームの一員として、中間赤外線diffuse全天マップの作成に携わり、平成27年度3月のマップ一般公開に向けて解析を行っている。私はその中でマップからの黄道光差引を担当している。黄道光とは太陽系内の惑星間ダストからの熱放射であり、中間赤外線においては支配的な前景成分である。つまり「あかり」全天マップを用いて、全天における有機物からの放射を捉えるためには、黄道光の正確な差引が必要不可欠である。従来用いられていた黄道光モデルによる差引では、高銀緯領域の淡く広がった星間物質からの放射を捉えるには不十分であったため、私は「あかり」のデータを使って新たな黄道光モデルを作り、これまで以上に正確な黄道光の除去を可能にした。また同時に「あかり」中間赤外線全天マップは、全天の黄道光放射をかつてない高い空間分解能でトレースしたものであるため、惑星間ダストの研究をする上でも有用なリソースである。そこで私は黄道光のモデル化を進める上で、惑星間ダストの性質について新たな知見を得ることができるのではないかと考え、そのことを目標に平成26年度は研究を行った。その結果、太陽からの距離に対するダストの温度・密度変化を明らかにすることができた。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、「あかり」中間赤外線全天マップからの黄道光除去を行い、さらにその成果を発展させ、惑星間ダストの物理に迫ることができた。「あかり」全天マップ完成の目処が立ち、全天の星間物質について議論を行う準備ができつつある。
「あかり」中間赤外線マップから得られた黄道光モデルに対して、物理的考察を行い論文としてまとめる。黄道光を除去したマップを、全天の星間物質の情報を与えるリソースとして提供するとともに、惑星間ダストに関してはさらに詳細に踏み込み、博士論文としてまとめる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち謝辞記載あり 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Proceedings of The Life Cycle of Dust in the Universe: Observations, Theory, and Laboratory Experiments
巻: PoS (LCDU 2013) 033 ページ: -
巻: PoS (LCDU 2013) 108 ページ: -
Planetary and Space Science
巻: Volume 100 ページ: 6~11
10.1016/j.pss.2014.01.017
http://www-ir.u.phys.nagoya-u.ac.jp/