研究課題
ゲノムワイドSNPデータについてクオリティーコントロールを行った後、国際HapMap計画フェイズ2のJPTとCHBのデータを参照パネルとして遺伝子型のインピュテーションを行った。結果として、およそ400人、200万SNPsの遺伝子型データを得た。前年度に整理済みの表現型データのうち、顔面・前腕・下腿のデータを用いて関連解析を行った。ゲノムワイドSNPデータの主成分分析の結果から、k-means法を用いて被験者を本土セットと琉球セットの2つのデータセットに分割し、それぞれのデータセットに対して線形回帰モデルを用いた関連解析を行った。共変数には被験者の年齢と、それぞれのデータセットのSNPデータを用いて主成分分析を行った際の上位10主成分の得点を使用した。結果として、6番染色体のETV7遺伝子上のrs6930836がゲノムワイド有意水準を満たすP値を示したため、これを体毛の濃さに関連する多型の候補とした。しかし、このSNPのアリル頻度は本土集団と琉球集団との間でほとんど差が無かった。本土集団と琉球集団の体毛の濃さには明確な差があることが前年度の研究で明らかになったが、このSNPは両集団の表現型の差には寄与していないと考えられる。一方でこのSNPのアリル頻度は、ネイティブアメリカン集団で顕著に高かったため、現在ネイティブアメリカン集団で何らかの自然選択が作用した痕跡が無いか調査中である。このために、より高密度のSNPデータを取得するため、新たに1000ゲノム計画のJPTとCHBのデータを参照パネルにしたインピュテーションを実施中である。また、ゲノムワイド有意水準には達しないものの2番染色体にも体毛の濃さとの関連を示唆するピークが検出された。このピークの近傍には、頭髪の太さに関連すると報告されているEDAR遺伝子があるため、この遺伝子の体毛への影響も併せて検証していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
本年度は体毛の濃さと有意な関連を示すSNPを検出することができた。また、ゲノムワイド有意水準は満たさないものの、有望な関連候補SNPもいくつか検出することができた。トップの関連を示したSNPはネイティブアメリカン集団においてアリル頻度が顕著に高い傾向にあり、自然選択の研究の対象としても興味深いものであると思われる。
体毛の濃さと有意な関連を示したSNPについて、別のサンプルセットを用いてTaqMan法により再現性の確認を行う。また、関連SNP周辺領域に自然選択が作用した痕跡がないか検証する。併行して古人骨のゲノム解析を進め、ゲノム情報から古代人の表現型の推定を行う。
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Molecular Biology and Evolution
巻: 31 ページ: 2929-2940
10.1093/molbev/msu230