研究課題/領域番号 |
13J02580
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉野 未奈 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | パルス性地震動 / 伝統木造建物 / 最大応答評価 / 耐震診断 / 振動台実験 / 静的加力実験 / シミュレーション解析 |
研究概要 |
1995年兵庫県南部地震ではパルス性地震動によって木造建物が多数倒壊し、今後もパルス性地震動に対する建物被害が危惧される。一方、伝統木造建物が各地に残り、地域の活性化に利用されている。本研究では、パルス性地震動に対する伝統木造建物の地震時挙動を解明し、簡易かつ高精度な耐震診断法を構築することを目的とし、当該年度は下記の独創的な研究を行った。 1、パルス性地震動に対する2階建伝統木造軸組架構の地震時挙動の把握と簡略応答評価 試験体および加振波を単純化した2階建伝統木造軸組架構の振動台実験の結果を分析し、地震時に注意を要する構造箇所の把握、耐震性能評価指標として用いる最大応答変形の簡略的な評価を行った。更に、2階建軸組架構の解析モデルを構築し、シミュレーション解析および感度解析を行った。 2、通し柱を有する2階建伝統木造軸組架構の終局状態の把握とシミュレーション解析 1、の振動台実験で確認できなかった2階建伝統木造軸組架構の終局状態を把握するために、壁配置をパラメータとした通し柱を有する2階建伝統木造軸組架構の静的加力実験を行った。また、1、で構築した2階建伝統木造軸組架構の解析モデルによって、大変形時においても復元力特性を追跡できることを確認した。 3、パルス性地震動に対する1自由度系の簡略最大応答評価 パルス性地震動をGabor waveletを用いて特性化し、地震動および建物の数少ないパラメータを用いて、収敏計算を行わずに簡略的に完全弾塑性型復元力特性を有する1自由度系の非線形最大応答変位を評価する方法を提案した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度は、2階建伝統木造軸組架構の静的加力実験の計画を立て、実験を遂行して大変形時における2階建伝統木造軸組架構の終局状態の把握を行った。一方で、パルス性地震動に対する最大応答変位の評価式を理論解や数値解析を用いながら構築した。このように、1年間で実験や数値解析といった多彩な手法で研究を進め、研究課題の達成に近づくことができた。また、得られた成果を審査付学術論文や国際シンポジウムで発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、パルス性地震動に対する伝統木造建物の地震挙動の解明と耐震診断法の構築を達成するために、下記に示す研究を推進する。 1、伝統木造建物の基本構成要素である単位軸組架構の剛性や減衰定数が変形に依存して変化する動的変形特性という性質を、多様な単位軸組架構静的加力実験の結果から評価する。また、簡明な式で表現可能な動的変形特性評価式に一般化する。 2、単位軸組架構の動的変形特性評価式に基づいた全体軸組架構の動的変形特性の算出手法を構築する。 3、伝統木造建物の最大応答値を指標とした、パルス性地震動に対する耐震診断法を構築する。
|