研究課題/領域番号 |
13J02614
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
飯田 悠哉 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 外国人労働者 / 農業労働者 / 技能実習生 / 在日フィリピン人 / 家族農業 / 国際労働移動 / 高冷地 / 農村 |
研究概要 |
今年度の研究は、従来顧みられていなかった日本農村における労働力の多国籍化の実相を明らかにすることを目的とした。とりわけ中国や東南アジアから「技能実習」資格のもとで来日する外国人農業労働者の国際移動に注目し、途上国農村部と日本農村部との間でどのような雇用システムが形成され維持されているのか、また双方の農村社会に如何なる変容をもたらしているのかを具体的な課題とした。調査地域は、夏季農繁期のみ村内人口の1割強に比する数の外国人農業労働者が滞在・就労している長野県の高冷地農村とし、断続的な参与観察を行うとともに、主にフィリピン出身の外国人労働者および雇用農家世帯双方へのインタビュー調査を計22件実施した。また、比較対象として従来の日本人季節労働者に対しても計6件のインタビュー調査を行った。さらに、当初計画にはなかったが、事例地の季節労働の変化について、時間軸を遡って国会図書館に所蔵された70年代以降の求人誌を渉猟し、データ収集にあたった。以上の調査は概ね想定通り遂行することが出来た。 成果として、通時的な季節労働の変化に関する分析を加えたことによって、農業労働の外国人労働者化をめぐる重要な分析視角を指摘できたことが大きい。すなわち、資本一賃労働といった生産関係のみでは「よそ者」である季節労働者と雇用農家世帯・当該農村との関係は捉えきれないこと、家事労働など再生産領域を含み込んでこそ両者の関係とその変化を捉えうるという視角である。これによって、繁閑が激しく、かつ生産と再生産が密接・不可分な家族農業の特性を踏まえた労働移動の分析が可能となった。この分析結果を日本村落研究学会の大会において報告し、一時的に世帯成員となる住込季節労働者の存在が、家族成員との間で家事労働の関係上、従来から矛盾と軋轢が生じており現在の外国人労働者化にいたる農業季節労働の変容につながってきたことを提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ収集は概ね当初計画の水準で遂行でき、また分析結果をまとめて学会報告することができた。さらにブラッシュアップして投稿論文を執筆しており、次年度の4、5月中には投稿する予定である。また、次年度以降のフィリピン調査の準備段階として、フィリピン出身労働者や現地の海外雇用派遣会社のエージェントとの関係形成を行えた。
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今後の研究の推進方策 |
年度の早い段階で、前年度の成果をとりまとめて、日本村落研究学会に論文投稿を行う。7月・8月にはフィリピンでの現地調査を行い、これまで蓄積したデータと付きあわせて分析したのち、国際学会(Asian Rural Sociology Asociation)において口頭報告を行う。また、年度の後半には、博士論文の内容に関して、具体的な構成案の作成に取りかかる。懸念される問題点としては、継続的な現地調査の成否であり、そのために前年度のインタビュー調査で関係形成のできたフィリピン出身労働者の一人に調査補助の依頼を行う予定である。
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