研究課題/領域番号 |
13J02632
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
玉手 智史 東北大学, 大学院生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 適応進化 / 小笠諸島 / グリーンアノール / 全ゲノム / 外来種 |
研究概要 |
1. 全ゲノム配列の決定 小笠原母島個体と沖縄個体の全ゲノム配列を次世シーケンサにより決定した。沖縄集団は小笠原諸島と同様にグリーンアノールの侵入が観察されている地域であり、小笠原集団との比較に用いることができると考えている。また、個体数が不足していたフロリダ個体を解析し、全ゲノム配列を決定した。 2. 個体間変異の位置と数の検出 前年度までに解析が終了している小笠原諸島父島とフロリダ個体に加え、小笠原母島個体と沖縄個体の全ゲノム配列を次世代シークエンサーにより決定した。沖縄本島集団は小笠原諸島と同様にグリーンアノールの侵入が観察されている地域である。しかしながら沖縄本島では侵入から時間が経過した現在でも顕著な拡大は観察されておらず、小笠原諸島とは異なる侵入状況にある。従って、沖縄本島集団を解析に加えることにより、小笠原諸島での拡大・定着に寄与した独自の進化的変化が明らかになるだけでなく、拡大しにくい環境における制限要因を類推することにより保全生物学的アプローチも可能になるのではないかと考えている。また、個体数が不足していたフロリダ個体を追加し、全ゲノム配列を決定した。 3. 侵入後の具体的な形態変化を検出するため、侵入集団である小笠原父島・母島・沖縄本島、起源集団であるフロリダ集団の各個体の形態を計測した。計測部位は頭部と後肢を中心とした19部位とした。形態比較の結果、侵入地域(父島、母島)において頭部と後肢長が変化していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、計画していたグリーンアノールのフロリダおよび小笠原集団の全ゲノム配列のre-sequenceの完了。また、ゲノム配列からのSNPの検出と遺伝的変異の解析を行った。また、フロリダおよび小笠原個体群の形態比較による形態変化の検出も行い、後肢の長さが変化していることを見いだした。これらは予定されていたどおりの進展である評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られたゲノム情報に基づき、計画通り自然選択を受けた領域の検出と領域内の被選択遺伝子の特定を行う。さらに、検出された遺伝子のうち侵入・定着に関するものを選定し、次年度以降の生態学的調査の礎とする予定である。遺伝的研究については沖縄集団を加える。また、近年行われた研究の結果、日本に侵入したグリーンアノールは各侵入地点で異なる複数のハプロタイプを持つことが明らかになっている。さらに、グアム、ハワイを経由して日本に侵入した可能性が示唆されている。従ってより詳細な侵入経路の特定と前適応の可能性を明らかにするため、当初の研究計画に加え核DNAマーカーを用いた集団解析により詳細な集団構造を類推する予定である。
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