研究概要 |
本研究の最終的な目標は初代銀河の形成過程(宇宙論的な構造形成による暗黒物質の重力成長と、それに伴うガスの運動)と性質(銀河内の星の質量分布関数と、星間ガス中のダスト減光により、観測的にどのように見えるか)を知ることである。その前段階として、本年度は初代銀河を構成していると考えられる低金属量星の性質を調べた。星の性質はその金属量と質量によって決まる。金属を含まないガスの収縮により形成される初代星が比較的大質量(数10―1000太陽質量)であるのに対し(Hirano et al. 2014)、金属量がある程度(太陽金属量の10^-5程度)含まれているガス雲が収縮すると、ダストの放射冷却によって低質量の星が形成されうることが分かった(Omukai et al. 2005, ApJ, 626, 627)。ダスト冷却は一般的に髙密度(水素原子の密度としてnH~10^12―10^15/cc)で効果的になることから、冷却によって不安定になり分裂したガスの典型的な質量(ジーンズ質量)が小さくなるためである。本研究ではまず、重力収縮するガス雲の中心領域の温度の時間発展を準解析的に計算(ワンゾ―ン計算)し、形成される星の典型的な質量を見積もった(Chiaki et al. 2014)。さらに、本研究では初めて、重力収縮中において気相中の金属原子がダストに降着する現象(ダスト成長)を、ガス雲の収縮と整合的に解いた。その結果、ダスト成長は効果的になる場合があることが分かった。また、金属量が太陽の10^-6.2―10^-4.5倍のときに星質量の遷移が起きることを明らかにした。続いて3次元の流体シミュレーションによって収集するガス雲の進化を追った。球対称で等温のガス雲(Bonor-Ebert球)に10^―6-10^-2太陽金属量の金属を与え、重力収縮に伴う温度進化をシミュレートする。その結果、ガス雲の化学進化(例えば、炭素イオンが炭素原子になり、最終的に一酸化炭素分子に変化)とダスト成長を正確に解いていることが確認された。また、ガス雲の進化を高密度(nH>10^15/cc)まで計算することができた。
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