近年、ヒトの言語を含む音声コミュニケーションのモデルとして、マウスの超音波コミュニケーションが様々な文脈の研究で注目されている。現在、この超音波発声における声の単位は、約10種類に分類されているが、発声に含まれるや意味や意義については、不明な部分が多かった。申請者は、その発声に関して、以下のことを示すデータを採用期間中に得た。基本的には発声の特徴は遺伝によって決まること、しかし、個体差も存在すること。また、発声回数の個体差を形成する責任脳部位と、その部位での細胞種の特定もなされた。週齢と発声回数が負の相関を示すこと、発声回数の多い個体ほど繁殖効率が良いことなど、進化的・生態学的意義の一端もデータとして示され始めた。 また、当初計画していた実験は技術的問題を解決することができず、断念した部分もあるが、その過程で得られた上記の結果は、マウス超音波コミュニケーションにとって非常に基礎的で重要なものであった。
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