初年度には新生児の運動発達に関わる代表的な経路である皮質脊髄路の機能を評価するため、非侵襲的かつ安価な脳波・筋電図計を利用したCorticomuscular Coherence法を新生児に適用した。この手法は成人では容易に計測可能とされているが、新生児では申請者以外の報告はなく、計測は容易とはいえない。新生児における皮質脊髄路の機能的計測を簡易化するため、体動ノイズに強い筋電図のみを利用した計測および解析を行った。その結果、大脳皮質から骨格筋への下行性出力を認めた児では筋電図において一定の周波数帯のパワーが高いことが分かった。このことから皮質脊髄路の機能的評価に筋電図が利用できる可能性が示唆された。 また、昨年度の研究からCorticomuscular Coherence法で計測された新生児皮質脊髄路機能は生後日数と正の相関関係を持つことが分かっている。しかし、皮質脊髄路の機能的成熟と構造的成熟が同時に進んでいるか否かは明らかとなっていなかった。そこで、申請者はCorticomuscular Coherence法で計測した機能的評価と、MRI画像の中でも白質線維成熟を定量的に評価しうるDiffusion Tensor Imagingを用いた構造的評価を比較した。その結果、Corticomuscular Coherence法とDiffusion Tensor Imagingの間には明確な関連性は認められなかった。このことから、新生児期における皮質脊髄路の機能的成熟と構造的成熟はかい離している可能性が示唆された。
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