研究課題
1. 緑茶ポリフェノールの生体調節メカニズムの解明茶ポリフェノールの1つであるストリクチニン類の機能性を発揮するため必要な生体内標的分子を同定し、生体調節作用に対する連関性を明らかにすることを目的とした。ストリクチニン類の経口投与はアレルギー原因因子である免疫グロブリンE (IgE)産生を抑制すること。その作用機序として免疫グロブリ産生細胞におけるIgE産生シグナルを顕著に抑制することを見出した。現在、ストリクチニン類の抗アレルギー作用の発揮に必須な標的因子を同定するため、遺伝子工学的手法(Genetic Suppressor Elements (GSE)法など)を用いてストリクチニン類のタゲット分子の探索を進んでいる。本研究が遂行されれば、茶ポリフェノールの多くの生理作用メカニズムを体系的に解明できる可能性が期待でき、食品の機能性研究において極めて高いインパクトを与えることが予想される。2. 質量分析イメージング法を用いた緑茶ポリフェノールの生体内局在イメージング法の開発組織における茶ポリフェノールなどの食品成分とその代謝物の分布情報、生体内代謝物の変動情報を可視化する法の構築により、機能性成分の効果を高精度に評価できる新たな質量分析システムの創出を目指した。40種類以上のイオン補助剤の中茶ポリフェノールを高感度に検出できるマトリックスとして1,5-diaminonaphtalene (DAN)を見出した。さらに、1,5-DANを用いることで茶ポリフェノールを経口投与したマウスの肝臓と腎臓組織において、ポリフェノールならびにその代謝物の生体組織内分布情報の可視化に世界に先駆けて成功した。この技術を用いれることで、食品成分とその代謝物の時空間分解・網羅的解析によって食品成分の包括的・局所的作用機序を高精度に解明できると期待できる。
2: おおむね順調に進展している
茶ポリフェノールの抗アレルギー作用として、B細胞におけるIgE産生抑制機序を見出し、その成果をFEBS Open Biology誌に報告した。また、緑茶に多く含まれ、様々な生理作用が報告されている茶ポリフェノールを経口投与したマウス組織切片において、茶ポリフェノールならびにその代謝物がどのように分布するのかを非標識で可視化できる質量分析イメージング法の開発に成功した。本研究結果は、Nature姉妹誌のオンラインジャーナルScientificc Reports誌に報告した。以上のように、研究計画と目的に向かっておおむね順調に進展しているといえる。
GSE法により同定した候補遺伝子をRNA干渉法によりノックダウンした細胞を構築し、茶ポリフェノールの抗アレルギー作用を仲介する分子として機能するか否かを細胞系およびマウスモデルにおいて検証していく。質量分析イメージング法の開発においては検出強度を上げるためイオン化条件の最適化を計ることにより、低用量摂取時のポリフェノールに対する生体内イメージング法の開発を行う。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
Scientific Reports ジャーナル
巻: 3巻 ページ: 1-8
10.1038/srep02805
Scientific Reportsジャーナル
巻: 3巻 ページ: 1-7
10.1038/srep02749
FEBS Lettersジャーナル
巻: 587巻 ページ: 3052-3057
10.1016/j.febslet.2013.07.041
FEBS Open Biologyジャーナル
巻: 3巻 ページ: 341-345
10.1016/j.fob.2013.07.008
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/syokuryo/index.html