研究課題/領域番号 |
13J02708
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
舘 葉月 武蔵大学, 総合研究所, 特別研究員(PD)
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キーワード | 第一次大戦 / 赤十字国際員会 / 戦争捕虜 / 難民 / 国際連盟 / 国際人道法 |
研究概要 |
1863年の創設時からヨーロッパの人道活動の中心的役割を担ってきた赤十字国際委員会による両大戦間期の活動を通して、国際人道活動の拡大とそれに伴う競合・対立の発生に関する歴史的分析を行うことが本研究の課題である。その目的は、現代の国際政治において確固たる位置を占めつつも様々な論議の的にもなっている人道活動に関して、その発展期の拡大や定着の過程、政治的・外交的側面を明らかにすることで、当然視されがちな「中立性」や「普遍性」に疑義を挟み、人道活動を流動的な歴史的現象として理解することである。 本年度は、ジュネーヴ及びパリでの在外研究を行った。とりわけ、ジュネーヴでは、赤十字国際委員会の史料館並びに図書館、そして国際連盟文書館で史料収集に努めた。第一次大戦の経験を経た赤十字運動が、新しい行動規範をどのように作っていったのかを、赤十字国際会議(1921年、1923年、1928年)の史料で辿ると同時に、戦争犠牲者のための国際法整備の過程(1929年の捕虜協定及び民間人犠牲者のための法整備案)についての文書を閲覧した。 また、研究成果を論文並びに口頭発表で積極的に発信することにも努めた。『歴史学研究』に発表した「フランス抑留ドイツ人捕虜帰還を巡る国際世論の形成」は、赤十字国際委員会文書館・フランス外務省文書館・防衛省史料館及び新聞を含む同時代刊行物などの多様な史料に拠った実証研究である。『難民・強制移動研究のフロンティア』に採録された「難民保護の歴史的検討 : 国際連盟の挑戦と「難民」の誕生」では、1920年から1951年までの難民問題の変遷と国際組織の対応を論じた。国際シンポジウムでの発表では、大きなテーマの中に自身の研究結果を位置づける作業を通し、人道活動を国際関係史の中で解き明かすという本研究の課題をさらに進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、赤十字国際委員会の活動が飛躍的に拡大する契機となった第一次世界大戦直後の主要な二つの問題、すなわち捕虜帰還問題と難民問題に関する史料調査を網羅的に行うことができた。さらにこれらの論点に関し、口頭発表並びに論文で成果を公にした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度以降は、対象時期を拡大し、1920年代以降の人道問題に関してさらに網羅的に史料を収集していくこと、席十国際委員会以外の国際組織あるいは人道組織の活動に関する文献や史料を収集していくことが課題である。多様化する人道問題や増大する組織の中で、どの事例を掘り下げることが、本研究の課題に最も適しているかを判断することが今後の研究を進める上で重要であるため、慎重に見極めていきたい。
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