研究概要 |
「研究目的」加齢により骨格筋の筋量は減少し, 筋形状が変化する. 一方, トレーニングにより骨格筋の筋量を増加させ, 筋形状を変化させることができる. しかし, それらの変化がある筋や部位において特異的なものであるのかといった詳細については不明な点が多い. 本研究は, 大腿部の筋群を対象として, 加齢によって萎縮・筋形状の変化が顕著である筋・部位はどこなのか, そして加齢によるそれらの変化を抑制するためにはどのようなトレーニングを行うことが有効であるのかを明らかにすることを目的とした. 「研究方法」筋量や形状を正確に定量するため, 超音波法および磁気共鳴画像法を用いた. 加齢による筋萎縮や筋形状の変化における特異性を知るために, 高齢者と若年者を対象とした測定を行い, 測定値を比較した. トレーニングによる筋量や筋形状変化の特異性を知るために, スポーツ選手を対象とした横断および縦断的な検証を行った. 本年度は脚伸展動作(膝と股関節の同時伸展)を繰り返すスポーツであるボート・自転車競技選手, および様々な動作を含むラクロス選手を対象とした, 本年度は大腿四頭筋を測定および分析の中心として実施した. 「研究成果」本研究の結果, 萎縮の程度には大腿四頭筋を構成する筋間で差があることが示唆された. ボート選手を対象とした横断研究の結果, 一般人と比較して, ボート選手は大腿四頭筋が顕著に肥大しているものの, 膝関節と股関節をまたぐ二関節筋である大腿直筋は一般人と同程度の筋量しか有していないことが明らかとなった. 自転車競技選手においても同様の量的特徴が観察され, それは6ヶ月間のトレーニングによる筋肥大の筋特異性から説明された. 一方, ラクロス選手は上記2競技とは異なり, 大腿直筋が顕著に発達しているという結果が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は比較的運動習慣のある高齢者の測定が中心となっていたため, 運動習慣のない高齢者のデータも取得し, 同様の結果が得られるのかを確認する. 未分析のデータが多くあるため, その分析を進める. 本年度の研究によって, トレーニング効果の筋特異性については一定の結果を得ることができた. そのメカニズムの解明と, トレーニング効果に対するさらなる知見を得ることが重要である. 残りの研究期間を考慮すると, 長期的な検証は困難であるため, 1セッションのトレーニングを実施する実験などを加えることで, 目的を達成するための知見を増やしていく予定である.
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