「研究目的」 本年度は、昨年度に実施した中高齢者測定のデータに関して、運動習慣を考慮しデータ数を増加させること(目的1)、昨年度とは異なるタイプの動作が中心となるスポーツ選手の測定を実施し、スポーツ動作と筋形状の変化についての関係性を検討すること(目的2)、ならびに昨年度得られた「トレーニング効果の協働筋間差」をもたらす要因について検討すること(目的3)を目的とした。 「研究方法」 第1の目的を達成するために、磁気共鳴画像法を用いて、主に運動習慣のない中高齢者の大腿部横断像を取得した。合わせて、筋力や日常生活動作能力などの機能評価も行った。第2の目的を達成するために、陸上短距離選手を対象とした測定を実施した。そして第3の目的を達成するため、一般成人を対象として、単関節動作と多関節動作、および単関節動作に隣接関節の動きを複数条件下で組み合わせた動作を行わせ、そのときの大腿部筋の筋活動量を計測し、その程度を比較した。 「研究成果」 第1の目的に関して、運動習慣を考慮したデータ解釈が可能となる被験者数を確保することができた。分析が一部データのみに止まっているため、より詳細な分析を継続する。第2の目的に関して、陸上短距離選手は、昨年度データを取得したボートや自転車選手とは異なる筋量の特徴を有していることが示された。ボート、自転車選手は二関節筋である大腿直筋の筋量が一般人と同程度であったのに対して、陸上短距離選手は肥大した大腿直筋を有していた。第3の目的について、多関節動作中における大腿直筋の筋活動量は単関節動作中のものと比較して顕著に低く、その程度は隣接関節において発揮されている関節トルクと関連していることが示された。一連の研究結果から、加齢による筋形状の変化には変化しやすい筋が存在すること、そしてその筋を鍛えるための適切なトレーニングが存在することが示唆された。
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