研究課題/領域番号 |
13J02727
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡辺 顕士 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 円偏光発光 / ポリフルオレン / 励起状態 / キラリティ / ハイパーブランチ |
研究概要 |
本研究は、特別研究員らが最近報告した、環状光学活性基であるネオメンチル基を側鎖に有するハイパーブランチ(HB)型ポリフルオレンビニレン単独重合体(HB-PFV)の高非対称な円偏光発光の機構解明、新規高効率円偏光発光性高分子の創成を目的とする。本年度は特に、ネオメンチル基を側鎖に有する直鎖状ポリフルオレン(PF)誘導体に加え、HB型PF単独重合体(HB-PF)およびポリフルオレンエチニレン単独重合体(HB-PFE)の合成・評価を行った。 直鎖状PF誘導体としては、9-ネオメンチル-9-ペンチルフルオレン(NPF)単位のみからなる単独重合体およびNPF単位と9,9-ジオクチルフルオレン単位からなるランダム、交互共重合体を合成した。これら直鎖状PF誘導体薄膜の非対称性は、g_<CPL>値(励起状態)が最大で約5倍、g_<CD>値(基底状態)よりも大きかった。交互共重合体薄膜に対しては加熱配向処理が有効であり、処理前では10^<-4>オーダーだったg_<CD>、g_<CPL>値は各々0.03、0.16まで増大した。既存の直鎖状光学活性側鎖を用いた研究では、2つの状態での非対称性は大きく違わない。本結果はネオメンチル基が励起状態キラル増幅に寄与することを示唆した。 続いて、HB型高分子としてNPF単位のみからなるHB-PFおよびHB-PFEを合成した。未処理の直鎖状PF誘導体薄膜のg_<CD>値、g_<CPL>値はいずれも10^<-4>オーダーだったが、HB-PFはg_<CD>=-1.1×10^<-4>に対しg_<CPL>=-1.8×10^<-3>であり、より大きな励起状態キラル増幅を示した。HB-PFE薄膜は-0.9×10^<-4>のg_<CD>値を示したが、円偏光発光を示さなかった。これらの結果から、HB型主鎖構造が直鎖状に比べてより励起状態キラル増幅に寄与していることが示唆された。しかし、HP-PFEのような構造では円偏光発光を示さないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに高分子を合成し、直鎖状ポリフルオレンおよびハイパーブランチ型ポリフルオレンに関してハイパーブランチ型ポリフルオレンビニレンと同様に環状のキラル源基が円偏光発光に有用であることを見出し、今後の研究に関する重要な知見を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
キラル発光のメカニズムを解明する目的で、まずHB-PFV単独重合体のモデル化合物として分子量および化学構造の明確なオリゴマーを系統的に合成し、キラル発光肇牲と構造の関係を調べる。加えて、励起状態に近い構造を有すると考えられるモデル化合物を合成し、励起状態キラリティの本質を探る。さらに、理論計算により励起状態キラリティについての知見を得るべくモデル化を検討する。
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