本年度は、昨年度からの継続として、菌根菌が樹木群集動態に与える効果を検証することを目的とし、京都大学理学部植物園にて野外操作実験を行った。温帯林において優占する二種類の菌根タイプ、外生菌根菌(EcM)とアーバスキュラー菌根菌(AM)、に注目し、菌根親樹処理区に実生移植処理区を交差させる直交要因実験を遂行した。具体的には、先ず、土壌を充填したメソコズムを36基設置し、そこに、それぞれの菌根菌タイプを根に有する菌根親樹処理区を設置した。これらの親木群集とその菌根菌が安定化するであろう三か月後、菌根菌に未だ感染していない実生をEcM性とAM性樹種のそれぞれについて準備し、菌根親木処理区と交差するように割り振り、親木の直下に移植を行った。十分な成長変化がみられるであろう二度の生育期を経た一年半後、それらの実生全てを収穫した。実生の生存率・成長率・葉の元素組成(炭素・窒素・リン・カリウムなど)・根圏微生物の次世代シーケンスGSJrの解析データをもとに、親樹から実生への菌根菌の継承様式を明らかにしたうえで親樹-実生間の相互作用を定量化した。次世代シーケンサーによる菌根菌群集の解析では、野外実験であるがゆえに、一部のサンプルで十分なリード数を得ることができなかったため、現在、MiSeqを活用して再解析を進めている段階である。これらのデータを統合的に解析することで、外生菌根菌(EcM)とアーバスキュラー菌根菌(AM)のそれぞれが、どのように樹木とかかわり合い、森林の構造と動態に影響するのかをより深く理解することが可能になると考える。
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