サルコペニアは、「加齢に伴う筋力の低下、または老化に伴う筋肉量の減少」と定義されている。誰もが容易に利用可能なサルコペニアの簡易評価法を開発することは、要介護者が急増している我が国において必要性が高く、意義深い研究であると考えられる。 前年度において、特定健診・特定保健指導の標準的な質問票による身体活動調査によってサルコペニアの簡易評価が可能か否かを検討した結果、質問票単独では精度が十分でないことが示唆された。そこで、本年度は下腿周囲長に着目し、下腿周囲長がサルコペニアの簡易評価法として有用か否かについて検討を行った。 (方法)40歳以上の男女526名を対象とし、立位時の下腿の最大周囲長とDXA法を用いた筋量の評価を行った。DXA法で得られた四肢筋量の値を基にサルコペニアを判定した。(結果)サルコペニア該当者の割合は、男性7.3%、女性7.0%であった。下腿周囲長と四肢筋量との間に有意な正の相関関係が認められた(男性:r=0.81、女性:r=0.73)。また、ROC解析によりサルコペニア評価のための下腿周囲長の最適カットオフ値を求めたところ、男性は34cm(感度88%・特異度91%)、女性は33cm(感度76%・特異度73%)であった。(結論)下腿周囲長と四肢筋量との間に比較的強い相関関係が示され、下腿周囲長はサルコペニアの簡易的な代替指標として使用できる可能性が示唆された。また、サルコペニア推定のための下腿周囲長の最適カットオフ値は男性34cm、女性33cmであった。(研究成果の発表)第69回日本体力医学会において本研究成果の内容を発表した。さらに、国際雑誌「Geriatrics & Gerontology International」に原著論文が受理された。
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