研究課題/領域番号 |
13J02754
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加藤 新一 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 陽子加速器 / 空間電荷力 |
研究概要 |
陽子加速器の大強度化のためには、ビームロスを低減させ機器の放射化を抑えることが最重要課題である。このロスの起源の一つとして、空間電荷力によるチューンスプレッド(Δr)がある。本研究では、ビームの電荷密度分布をコントロールすることで空間電荷力を緩和し、Δrを最小化したビームの形成を目指している。本研究は、J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)を舞台として行なっている。 1. 入射過程を用いた電荷密度分布のコントロール RCSは、線形加速器からの入射を多周回に分けて繰り返し行うことで大強度を実現している。この入射中に、入射ビームの軌道と先に入射されている周回ビームの軌道とを変化させずらしていくことで、意図的にビームを太らせ電荷密度を緩和している。この軌道変化パターンは、低強度の場合において最適化されている。そこで、空間電荷力が大きな大強度のビームの場合に最適となる軌遣変化パターンを、シミュレーションを用いて検討した。その結果、現在よりもビームを平均化し電荷密度を緩和できる新しい軌道変化パターンを提案することができた。 2. 高周波2極エキサイタのための磁性体コアの試作と実機の検討 ビームに大きな蹴り角を与える高周波2極エキサイタを導入することで、Δrを測定できる可能性がシミュレーションより示唆されていた。そこで、高周波磁場に対応できる磁性体金属を芯とした、磁場エキサイタを検討した。実機を制作するにあたっては、必要となる入力電力が現実的なもめであるかが問題となる。そこで、実機の1/4サイズの磁性体コアを試作し、共振回路系でのシャントインピーダンスの測定から、必要電力を検討した。その結果、磁場エキサイタに必要な入力電力は、実現可能な値であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
入射過程を用いた電荷密度分布のコントロールについては、シミュレーションより良好な結果が得られており、実際に加速器に適応できる段階にきている。一方で、チューンスプレッドを測定する手法として有力視されていた2極エキサイタを用いる方法は、困難であることが示唆されてきている。
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今後の研究の推進方策 |
入射過程を用いた電荷密度分布のコントロールについて、シミュレーションで得られた軌道変化パターンを実際に加速器に適用し、実験を行うつもりである。シミュレーションによる検討の過程で、高周波2極エキサイタはチューンスプレッドの測定よりも、ビーム形状を入射後に変化させるために使用する方が効果的であると示唆されている。そこで、この目的での使用を検討していく。
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