研究課題/領域番号 |
13J02755
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石橋 悠人 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | グリニッジ天文台 / 時報技術 / 標準時 / 電信 / ヴィクトリア朝 / イギリス帝国 / 天文台 / リヴァプール |
研究概要 |
本研究は19世紀イギリスにおける科学技術と社会・帝国との関係を考察するために、グリニッジ天文台の社会的機能を解き明かすことを目的としている。平成25年度には、同天文台の社会的な役割のなかでも特に大きな効果を発揮した、標準時報の発信サービズについての研究を進展させることができた。この研究に取り組むために、平成25年4月から11月にかけて、英国・ケンブリシジ大学や他の公文書館・図書館で在外調査を行い、とりわけグリニッジ天文台アーカイブズの該当箇所を集中的に分析した。7月には英国・マンチェスタで開催された国際科学・技術・医学史会議そく中間報告となる口頭発表を行ない、専門分野の近い科学技術史家たちと有益な研究討論を行うことができた。これらの史料調査と研究討論は、①『社会経済史学』と②Utnnals of Scieneeに掲載された2篇の論文の執筆・完成作業のなかで大いに役立った。①では、1850年代初頭に開始された時報事業に焦点を当て, ヴィクトリア朝イギリスにおける正確な時間の通知・表示技法の変革とその広範な社会的な影響を解明した。②では、時報技術と電気時計の発展という脈絡で、リヴァプールを舞台に連続的に生起した発明や実験の重要性を指摘した。上記の研究とその成果発表に加えて、イギリのヌ帝国の天文台ネットワークの構造乏機能に関する調査にも並行して取り組んだ。現在、史資料の分析を行っている段階であり、次年度のできるだけ早い時期に中間成果を発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、まずは19世紀のグリニッジ標準時の発信事業や天文台ネットワークの編成など、国営天文台の社会的機能の実態を分析する必要があり、そめための調査は計画通り進んでいる。二篇の論文の出版を通して、それらの調査の成果は既に部分的にではあるが発表されている。また、帝国の天文台ネットワークの研究についても、史料収集を終えており、現在分析を行なっている。平成26年7月に行われる国際学会へのプロポーザルが受理されており、そこで中間報告となる口頭発表を行なう予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年8月には、ロンドンとケンブリッジの図書館・公文書において追加の調査を行う。とくにグリニッジ天文台長が政府の各部門とどのような関係を取り結び、いかなる科学的助言を提起していたかを究明する作業に重点を置く。また、研究を進める中で、グリニッジ末文台の科学者たちが、公衆に向けた科学コミュニケーションに励んでいたことが明らかになってきた。今後は、同天文台の社会的機能を分析するためのアプローチとして、彼らが発表した一般向けの雑誌論文・著書などの内容にも研究の幅を広げていく予定である。
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