研究課題
あかり衛星に搭載された赤外線カメラIRCのデータ校正用に取得された近赤外線分光データを用い、データの評価手法の開発・妥当性の評価を行った。そこで得られた知見をもとに、同観測プログラムにより取得されたデータを用い、星間空間に存在する多環式芳香族炭化水素(PAH)と呼ばれる有機分子が示す放射バンドについて調査し、その成果をAstrophysical Journal誌の784号にて学術論文として発表した。論文の出版にあわせ、研究成果についてのwebリリースを行いデータをカタログとして公開した。本カタログは、系内のHII領域の近赤外ペクトルのカタログとしては世界最大級・最高感度を誇る。更に, 本研究を萌芽とし、星間空間に存在するPAHの化学進化についてのより詳細な調査を目的とした観測提案をハモンズ氏他とともにすばる望遠鏡S14B期共同利用公募に提出した。また、同スペクトルデータにて現れる氷の吸収についての調査を行い、その成果を2014年3月国際基督教大学にて行われた日本天文学会2014年度春期年会にて発表した。加えて、あかり衛星が取得したデータを用い、星間空間に存在するPAHによる重水素の取り込みについて調査し、その成果を尾中教授他とともにAstrophysical Journal誌の780号にて学術論文として発表した。本研究成果を受け、赤外線分光観測による星間空間に存在するPAHの形成と進化を探る新たな手法の開発を目的として、重水素を含む炭化水素化合物の合成・測定実験を行い、その成果を2013年9月仙台で行われた日本天文学会2013年度秋期年会、2013年11月札幌で行われた新学術領域「宇宙分子進化」第一回研究集会、及び、2013年度12月にコナで行われた国際学会The 5th Subaru internatinal Conferenceにてそれぞれ発表した。
2: おおむね順調に進展している
あかり衛星のデータの評価手法の開発、妥当性の評価をするなかで、あかりの取得した近赤外スペクトルには我々が想像していた以上に星間空間の物質と関連する様々な特徴を示すことが明らかになった。解析により、それらの特徴のいくつかは、PAHの形成と進化を探る新たな手がかりとなることわかった。しかしながら、当初予定していた、LMCサーベイプログラムにより取得されたデータの解析が遅れている。
あかり衛星の赤外分光データを用いた氷の吸収の調査、及び、重水素を含む炭化水素化合物の合成・測定実験についてそれぞれ学術論文としてまとめる。本年度得られた知見をもとに、当初予定していた、LMCサーベイプログラムにより取得されたデータの解析を行い、近赤外域に現れる各特徴の放射強度マップを作成し、赤外イメージとの比較を行う。また、あかり衛星が取得した赤外スペクトルをもとに、大型地上望遠鏡による観測計画を立案・遂行する。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) 備考 (2件)
The Astrophysical Journal
巻: 789 ページ: 114-122
10.1088/0004-637X/780/2/114
巻: 784 ページ: 53-64
10.1088/0004-637X/784/1/53
Proc. of the Life Cycle of Dust in the Universe : Observations, Theory, and Laboratory Exenments
巻: (印刷中)
http://www.ir.isas.jaxa.jp/AKARI/Outreach/results/IRC_GALHII_spec/GALHII.html
http://www.ir.isas.jaxa.jp/AKARI/Archive/Catalogues/IRC_GALHII_spec/