研究課題
前年度に引き続き、あかり衛星に搭載された赤外線カメラIRCで取得された近赤外線スペクトルデータの評価を行った。スペクトルデータに広く現れる氷の吸収についての調査を行いその成果を2014年7月にOxford Universityにて行われたthe 3rd AKARI Conferenceにて発表した。また、超新星残骸G318.05+0.09において検出された特異なスペクトルについての調査を行いそのスペクトルが高速度でblue-shiftする高温のCOガスの放射により再現されることを示した。この成果は2015年3月に大阪で行われた日本天文学会2015年度春期年会などで発表された。本研究により発見された高速度で動く高温のCOガスは超新星残骸のejectaに由来することが期待される。この仮説を検証することを目的として現在複数の望遠鏡に観測提案を行っている。また、前年度に引き続き、赤外線分光観測による星間空間に存在するPAHの形成と進化を探る新たな手法の開発を目的として、重水素を含む炭化水素化合物の合成・測定実験を行い、その成果を2014年12月にインドTezpurで行われたIDMC 2014にて発表した。これらの成果はフランスSaclay研究所でセミナー発表され活発な議論が行われた。これらの研究とは独立に、地上大型望遠鏡を用いた赤外線撮像観測とそれに基づく活動銀河核を囲むダストトーラスの赤外SEDの調査を行い、その成果をPublications of the Astronomical Society of Japan誌の66号にて学術論文としてまとめ、2015年3月大阪大学にて行われた日本天文学会2015年度春期年会にて報告した。本研究では近傍合体衝突銀河NGC 6240の南の核のコンパクトな放射のSEDを2から40ミクロンという広い波長域で始めて評価し、SEDがクランピートーラスモデルにより説明できることを示した。それによりAGNの真の光度のみならず、AGN周りのダストトーラスの性質についての示唆を得た。
2: おおむね順調に進展している
当初計画していた星間空間に存在するPAHのみならず氷やCOガスについて着目し、予想以上に研究を発展することができた。しかしながら、LMCサーベイプログラムで取得されたデータの解析が遅れている。
これまでに得られた知見を論文としてまとめる。また、LMCサーベイプログラムのデータ解析をすすめ論文としてまとめる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 66 ページ: 93--102
10.1093/pasj/psu068
The Astrophysical Journal
巻: 792 ページ: 80--81
10.1088/0004-637X/792/1/80