研究課題/領域番号 |
13J02765
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
中井 雄一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特別研究員(PD)
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キーワード | 電弱対称性の破れ / 階層性問題 / 超対称性 / Higgs粒子 / 余剰次元 / 大統一理論 |
研究概要 |
本研究の最終目的は、電弱対称性の破れの起源および階層性問題を完全な形で解き、現在の実験データと矛盾しない、新たな超対称模型の開発である。超対称性は、電弱対称性の破れの起源や階層性問題を考えるうえで有望なアプローチではあるものの、従来研究されてきたような最小限の形で、階層性問題を完全に解くことはできない。本研究では、階層性問題を完全に解決する新たな超対称模型の構築とその実験的予言の考察を行っている。最近のLHC実験のデータによって、階層性問題を完全に解決する超対称模型には、大きなHiggs質量を与える機構と、全体の超対称性の破れは大きくとも、Higgs sectorの超対称性の破れは小さく抑える機構の両方が要求されている。これに対して、我々が提案した、部分的に複合粒子(partially composite)としてのHiggs場は、有望なアプローチであると考えられる。このような状況は、Higgs場が強結合ダイナミクスを生じる新たなsectorと相互作用している場合に実現される。現在までの研究によって、観測された約125GeVというHiggs粒子の質量を自然に実現することができることがわかっている。さらに、強結合sectorが超共形対称性を保つ場合、くりこみの効果によって、Higgs sectorの超対称性の破れを小さく抑えられる可能性があり、現在、検証している段階である。 一方、本研究では、電弱対称性の破れに関する問題に加え、クォーク、レプトンの質量の階層構造、フレーバー物理からの制限の問題を解決し得る、超対称余剰次元模型にも注目し、この模型が持つ問題である、陽子の短寿命の問題およびU(1)D-termの問題を解決する現実的な模型を提唱した。我々の模型では、離散的なレプトン数対称性が課され、R-parityを破る項が許される。これは、現在のLHC実験による超対称パートナーの質量への制限を緩和する。また、U(1)D-termの問題の解決のために、10 TeVスケールで大統一理論が現れる。この研究は、ハーバード大学のBen Heidenreich氏、Lisa Randall氏、Matthew Reece氏と共同で行われ、その成果の一部は学会発表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Partially composite Higgs模型、現実的な超対称余剰次元模型の提唱によって、本研究の目的である、電弱対称性の破れの起源および階層性問題を完全な形で解き、現在の実験データと矛盾しない、新たな超対称模型の開発が順調に行われている。
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今後の研究の推進方策 |
Partially composite Higgs模型において、強結合sectorが超共形対称性を保つ場合、くりこみの効果によって、Higgs sectorの超対称性の破れを小さく抑えられるかどうか検証する。また、電弱対称性の破れに関する問題に加え、クォーク、レプトンの質量の階層構造、フレーバー物理からの制限の問題を解決し得る、超対称余剰次元模型の現実的な形に関する考察を進める。
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