自然界の基本的な構成要素である素粒子の質量の起源の解明は、素粒子物理学の最大の研究テーマの一つである。現在までに確立している標準模型は、Higgs場による電弱対称性の自発的な破れ(Higgs機構)によって、この問題に対する部分的な説明を与えている。しかし、標準模型のHiggs機構は、電弱対称性の破れの起源について何の説明も与えない。また、電弱対称性の破れるスケールがプランクスケールなどの大きなスケールに比べて非常に小さいことは大変不自然である(階層性問題)。さらに、クォークおよびレプトンの実際の質量の値を説明するには、Higgs場との結合に不自然な階層構造が必要とされる。 超対称性をもつ余剰次元模型を考えれば、これら素粒子の質量の起源に関する問題を完全に解ける可能性がある。 Higgs場はTeVブレーン上に、クォーク、レプトン(および超対称パートナー)は、その質量の階層構造を再現するように余剰次元空間内に配置する。プランクブレーンにおいて超対称性が破れる場合、軽いクォークおよびレプトンの超対称パートナーは大きな質量を獲得し、フレーバー物理の制限が回避できる。一方、トップクォークの超対称パートナー(stop)およびHiggs場は、プランクブレーンから離れているため、大きな超対称性の破れが伝わらず、階層性問題が生じない。Stop、Higgs場の質量は、量子効果の下でも安定であり、これは超対称性の低エネルギー領域での創発現象として知られる。その証明は、AdS/CFT対応によって双対な共形場理論を用いて与えられていたが、本研究では、この現象を高次元理論のdeconstruction法を用いて理解することに成功した。また、その過程で、deconstruction法によって得られた4次元moose理論と4次元共形場理論との(近似的な)対応関係についても明らかにした。
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