本研究は、報告者自身が今後執筆予定の博士論文の課題である、「ひきこもり」の当事者が人間関係や社会的ネットワークをいかにして形成しているのか、また形成していく際にどのような困難が経験されているのか、を「当事者研究」及び社会学的に記述・説明するものである。 昨年度に引き続き、①いままで捨象されてきた「ひきこもり」をめぐる「親密性」にかんする議論を、当事者における「問題経験の語り」として抽象し、当事者において「親密な人間関係の構築困難」がいかにして実践されているのかを明らかにする作業を行った。 また、②「ひきこもり支援」におけるフューチャーセンターや「ひきこもり大学」、「当事者研究会」など、当事者主体の〈支援〉活動の全国的隆盛を受け、本年度は昨年度以上に全国的な参与観察、聞き取り調査を行った。兵庫県、大阪府、香川県等の「ひきこもり」の自助グループや「居場所」の運営にもかかわりながら、全国的に研究にかかわるフィールドワークやインタビューを実行した。毎週、複数の当事者や家族とかかわりながら、その場を社会的に記述するためデータを収集した。 さらに、③報告者およびその他の「ひきこもり当事者」の実践を「当事者研究」として捉え、その研究プログラムと報告者が専攻する社会学との架橋を行った。 本年度は以上の三つの研究プログラムを軸に研究を遂行した。なお、これら①~③の研究課題は、現在それぞれ複数の論考としてまとめている最中であり、それらの論考を2016年5月までに加筆・再構成し、報告者の博士論文が作成される予定である。
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