研究課題/領域番号 |
13J02798
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
櫛引 崇弘 北海道大学, 大学院生命科学院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 抗菌ペプチド / Tachyplesin I / LPS / 複合体 / ドッキング |
研究概要 |
本研究はまず、抗菌ペプチドであるTachyplesin I (TP I)とリポ多糖の複合体モデルを基盤に、LPS結合能を上昇させた変異体の作製を目指している。そこで本年は、TPIとリポ多糖の複合体モデルを詳細に決定した。ここで決定する複合体モデルを出発点として今後の研究を進めていくため、モデルの詳細化は必要不可欠である。具体的にはTr-NOESYと呼ばれる、核磁気共鳴(NMR)装置を用いた測定を行い、LPS存在下でのTP Iの立体構造情報を精査することにより、精細な3次元構造を決定した。その後決定したTP Iの立体構造を用い、LPSとのドッキング計算を行った。得られた複合体については再現性も確認し、TP IとLPSの複合体構造モデルを決定した。ここまでの結果を論文にまとめ、海外学術雑誌へ投稿・受理された。 またTP IについてはLPS結合能以外に、強力なキチン結合能があることが知られており、その詳細についても研究した。キチンは真菌の外膜主成分であり、キチン結合能の詳細を研究することは抗菌ペプチドの真菌に対する活性を解明するうえでも重要であり、TP Iの生理活性の解明を明らかにすることにも繋がる。 まずはNMR測定を行い、キチンに対するTP Iの結合部位を予測した。その後変異体を用い、キチンに対するTP Iの結合部位をより詳細に検討した。この結果について、第51回日本生物物理学会年会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までに、今後の研究の足場となる、詳細なTP IとLPSの複合体を決定することができた。研究結果は学会で発表し、さらに論文として発表した。また、LPSに対する結合能を上昇させることを目的とした、各種変異体を用意した。ただし、それらの変異体の活性を測定するには至っていない。したがって、研究の目的の達成度としては「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に作成した変異体について、今後は市販されているキット等を利用し、LPSとの結合能を評価していく。結合能の高い変異体についてはNMR等を用いて構造解析を行っていくとともに、LPSを吸着・除去するようなLPSトラップカラムへの応用を検討する。
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