研究課題
本研究は、シロイヌナズナのホウ酸輸送体BOR1の「偏在」と「分解」に着目し、ホウ素栄養シグナルの伝達経路とBOR1の選択的輸送システムの解明を目的とする。私は、平成24年度までに高ホウ素条件においてもBOR1-GFPが分解されない変異株のスクリーニングを行い、5系統の変異株を単離している。平成25年度は、この変異株のうち1系統について、マッピングと次世代シークエンスのデータ解析によって原因遺伝子候補をほぼ一つに絞り、T-DNAノックアウト株を用いた解析により原因遺伝子の同定に近づいた。一方、BOR1がどのようなエンドサイトーシス経路で細胞内へと取り込まれるかはこれまで不明であった。そこで、植物のエンドサイトーシスに重要なダイナミン様タンパク質1 (Dynamin-related protein1, DRP1)が、BOR1のエンドサイトーシスを担い、BOR1の偏在を制御するという仮説を立てた。この仮説を検証するため、全反射照明蛍光顕微鏡を用いたBOR1-GFPおよびDRP1A-RFPの細胞膜上での局在や、DRP1の機能を阻害した条件におけるBOR1-GFPの細胞内局在を観察した。その結果、BOR1-GFPとDRP1A-RFPは細胞膜上で部分的に共局在し、さらにDRP1の機能が阻害されることでBOR1-GFPの偏在が著しく損なわれることがわかった。このことから、BOR1の偏在機構には、これまで提唱されていたBOR1のリサイクルだけではなく、DRP1依存的なエンドサイトーシスが重要であることが明らかになった。
3: やや遅れている
獲得した変異体の原因遺伝子の遺伝様式は優勢変異であった。次世代シーケンス解析によって得た候補遺伝子は、null変異により致死性をしめすことから、T-DNA挿入変異株を用いたアレリズムテストおよび相補試験が困難である。そこで、現在、RNAiノックダウン株の作出、優勢変異型タンパク質発現株の作出を行っている最中であり、当初の予定よりもやや遅れている。
RNAiノックダウン株の作出、優勢変異型タンパク質発現株の作出によって、BOR1分解変異株の変異原因遺伝子を決定する。BOR1の「分解」と「偏在」の制御に対する、クラスリンおよびクラスリンアダプタータンパク質・AP2寄与を明らかにし、DRP1の結果とともに、BOR1のエンドサイトーシス機構の全容を明らかにしたい。また、BORl偏在の数理モデル構築のために、BOR1のエンドサイトーシス速度等の定量的データを蓄積し、コンピュータシミュレーションによって検証したい。
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IPNC-B Proceedings Book
ページ: 344-345
ページ: 327-328
ページ: 1164-1165
ページ: 1118-1119