研究課題/領域番号 |
13J02803
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
江越 脩祐 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | コロナチン / 気孔開口作用 / 孔辺細胞 / ラマンイメージング / アルキン / COI1-JAZ複合体型受容体 / coi1-16s変異体植物 |
研究概要 |
申請者は、化学的、および、遺伝学的検証実験と共に、過去に報告例の無い植物生細胞でのラマンイメージングによりコロナチンの気孔開口作用を担う受容体の探索を行った。 ①、コロナチン構造異性体類を用いた化学的検証の結果、気孔開口活性を有するコロナチン構造異性体において、COI1-JAZ複合体型受容体との物理的親和性は否定され、COI1-JAZ受容体の下流で働く応答性遺伝子の発現も確認されなかった。また、モデル植物であるシロイヌナズナのCOI1タンパク質の機能を遺伝学的に欠損させた植物体(coi1-16s)を用いたコロナチンの気孔開口活性試験では、は野生株(col-0)と同等の活性が認められた。これらの結果から、コロナチンの気孔開口作用はCOI1-JAZ複合体に依存しない、新規受容体に基づくものと考えられた。 ②、コロナチンと同程度の気孔開口活性を有し、強力なアルキンラマンシグナルを持つ天然型プローブ合成した。天然型プローブを用いた孔辺細胞のラマンスペクトル測定の結果、小胞体と考えられる部位にプローブの局在が確認された。一方で、コントロール実験である、気孔開口活性を持たない鏡像体型プローブを用いた孔辺細胞のラマンスペクトル測定では、その局在性は完全に失われていた。 コロナチンの既知受容体であるCOI1タンパク質、および、JAZタンパク質は植物細胞内にて、核内に局在していることが報告されておる(Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 2012, 109, 20148-20153.)。今回の②の結果では天然型プローブは核周辺に集積しており、報告とは明らかに違う局在を示している。①の結果と合わせ、コロナチンの気孔開口作用はCOI1-JAZ複合体に依存せず、核周辺に局在する新規受容体に基づくものであることが強く示唆された。また、今回の②の成果は、生細胞内で代謝される化合物を用いてアルキン由来のラマンシグナルが観測できた初めての例である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ここまでの研究結果より、コロナチンの気孔開口活性作用を担う受容体は、COI1-JAZ複合体ではなく、孔辺細胞の核周辺に局在するタンパク質であることが強く示唆された。しかしながら、現在、葉緑体による自家蛍光のためラマンイメージングは良好な結果を出せず、標的タンパクを有する細胞小器官を完全に特定できていないため、標的タンパク質を同定可能な段階には至っていない。孔辺細胞に限らず、植物生細胞のラマンイメージングを確立するために、まずは葉緑体の自家蛍光を解決する必要がある
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今後の研究の推進方策 |
初めに、ラマンイメージング法を用いて、ここまでの研究結果からその存在が明らかとなった新規受容体の有する細胞小器官の特定を目指す。初めに、葉緑体の自家蛍光によるバックグラウンド上昇の低減を目指し、ラマン顕微鏡の測定条件を検討する。ラマンイメージングが可能な条件を見つけ次第、局在すると思われる細胞小器官を染色し、合わせてイメージングすることでコロナチンの作用部位を特定するとともに、植物生細胞でもラマンイメージングが有用であることを証明する。また、COI1タンパク質の機能を遺伝学的に欠損出せたシロイヌナズナcoi1-16s体を用いても同様手法でラマンイメージングを行うことで、COI1-JAZ複合体とは違うタンパク質であることを不動のものとする。 一方で、標的同定に使用する予定の光親和性コロナチン分子プローブを開発し、既に気孔開口活性を有する天然型プローブと、活性の無い鏡像体型のプローブを共に得ている。イメージングでコロナチンが作用する細胞小器官が特定後、これらのプローブを用いて標的の解析を進める。
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