研究実績の概要 |
申請者は、化学的、および、遺伝学的検証実験と共に、過去に報告例の無い植物生細胞でのラマンイメージングによりコロナチンの気孔開口作用を担う受容体の探索を行った。前年度の研究成果より、コロナチンの気孔開口作用は、既知受容体であるCOI1-JAZ複合体に依存せず、孔辺細胞ラマンスペクトル解析の結果、核周辺部に局在する新規受容体に基づく現象であることが強く示唆されていた。 ①、近年、COI1-JAZ複合体の下流で働くANACタンパク質が気孔開口活性の維持に関与することが報告された。そこで申請者は、anac変異植物体を用いて、コロナチンの気孔開口活性試験を行った。その結果、野生株 (col-0) と同等の気孔開口活性が認められ、ANACタンパク質はコロナチンの気孔開口活性に関与していないことが示された。 ②、コロナチンと同程度の気孔開口活性を有し、強力なアルキンラマンシグナルを持つ天然型プローブを用いて、変異植物体arc6-1を用いて孔辺細胞ラマンイメージング実験を行った。arc6-1は、葉緑体を含まない孔辺細胞が存在しており、これまで問題となっていた自家蛍光によるバックグラウンド上昇が抑えられた。実験の結果、孔辺細胞内において、気孔開口活性を有する天然型プローブの局在を示すイメージング図の作成に成功した。得られた図は2012年報告された (Scientific Reports., 2012, 2, 405.) 気孔開口時の小胞体局在イメージング図と良い一致を示していた。 去年度の研究成果、①、および、②の結果を合わせ、コロナチンの気孔開口作用は COI1-JAZ 複合体、ANACタンパク質に依存せず、小胞体に局在する新規受容体に基づく現象であることが強く示唆された。また、今回の②の成果は、植物生細胞内で代謝される化合物の局在性をラマンスペクトルによりイメージングできた初めての例である。
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