研究課題
2年目にあたる平成26年度では、設計した部分特異値分解アルゴリズムの内、特異ベクトル計算に用いるアルゴリズムについての性能評価と更なる高速化を目標とした研究を行った。また、研究過程で得られた知見を応用することで、他の特異値分解アルゴリズムなどの高速化も達成した。1) 再直交化付きブロック逆反復法の更なる性能評価: 昨年度開発した再直交化付きブロック逆反復法は、適用する再直交化アルゴリズム次第で異なる性能を示すことが分かっていた。このため、実際にどのような性能差があるのかの詳細について評価のための数値実験を行った。開発したアルゴリズムの提案も含め、この結果は査読付き論文誌に採録された。2) データ再利用性の高い再直交化プロセス計算法の開発とその応用: 再直交化プロセスに用いられるアルゴリズムのデータ再利用性を改善する並列実装法を開発した。数値実験による性能評価により、特異ベクトル計算に用いる再直交化付き逆反復法の計算時間を短縮できることを示した。また、この成果の応用として、同様の再直交化プロセスが現れる特異値分解アルゴリズムなどの高速化にも着手した。以上の結果については、国内外の研究会において発表し、成果物であるソースコードの公開も行っている。3) メニーコア環境における開発アルゴリズムの性能評価: 開発した部分特異値分解アルゴリズムをメニーコア・アーキテクチャの一つであるIntel Xeon Phi 向けに実装し、メニーコア環境においてのアルゴリズムの性能評価を行った。その結果、大規模な並列計算においてボトルネックとなり得る計算プロセスを特定することができた。今後の展望として、このボトルネックの解消を目指し、近年注目を集めているコレスキーQR分解法を導入したアルゴリズムの定式化が挙げられる。
2: おおむね順調に進展している
本年度に予定していた、部分特異値分解アルゴリズムの分散メモリ環境向け実装コードの開発および性能評価については着手が遅れることとなってしまった。一方で、安定性を高めるためのアルゴリズム選択や更なる高速化技法の開発、今後課題となり得る計算プロセスの特定など、より多くの知見を得ることができた。よって、最終年度である次年度の研究をスムーズに進めていくための土台は着々と完成に近づいていると考えられる。また、当初予定していた通り、徐々にソースコードの公開にも着手している。
当初の予定通り、開発した部分特異値分解アルゴリズムの大規模並列環境への適用および性能評価を進める。ボトルネックとなり得る計算プロセスに対しては、既に得られている改善指針に沿ってアルゴリズムの定式化および実装、性能評価を行う。また、成果物であるソースコードについても順次公開したい。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
第43回数値解析シンポジウム講演予稿集
巻: なし ページ: 140-143
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻: Vol. 2014-HPC-145, No. 20 ページ: 1-6
情報処理学会論文誌 コンピューティングシステム (ACS)
巻: Vol. 7, No. 3 ページ: 1-12
http://www-is.amp.i.kyoto-u.ac.jp/lab/hishigami/
http://www-is.amp.i.kyoto-u.ac.jp/kkimur/LAPROGNC/LAPROGNC.html