アフリカ諸国では、大規模な紛争や小規模な民族間の衝突、対立が頻発している。本研究では、ザンビアの多民族農村に暮らしている人びとの日常生活をみていくなかで、民族間の生業構造の違いや、民族間でみられる社会関係に関して明らかにし、多民族が共生する社会の実現に寄与することを目的としている。 本年度には、昨年度(平成26年度)の調査結果を整理して研究成果の発表につとめた。平成27年5月には日本熱帯生態学会、平成27年9月には日本地理学会において、ザンビア北西部の農村における耕作地の特性と各世帯の作物選択の違いについて発表した。また平成27年11月には人文地理学会において、ザンビア農村における移住者のライフヒストリーからみた移住形態に関する発表をおこなった。 平成28年1月から3月にかけては、ザンビア北西部において現地調査を実施した。おもに穀物の端境期における食料確保の実態について調べた。近年、ザンビア政府による化学肥料の供給が不安定であり、また降水量や雨の降り方の変動が大きいため、毎年のように十分な量の穀物を収穫することができていなかった。そのため、これまでトウモロコシやモロコシを基幹作物としてきたカオンデの人びとは、土壌を選ばず、耐乾性の強いキャッサバを栽培しはじめていた。カオンデは、もともとキャッサバを栽培してきたルンダやルバレといった移入者たちから栽培技術や生産財を獲得していた。カオンデの世帯では雨季に、穀物のかわりの救荒食物として、キャッサバを頻繁に食べていた。
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