本研究では、XMASS検出器を用いて暗黒物質の季節変動現象に関する解析を行った。季節変動解析において低エネルギー領域での検出器応答はとても重要であり、より低いエネルギー領域でのエネルギースケールを行うことが求められている。平成27年度は、以下の活動を行った。 アルミニウムの特性X線 1.5 keVを利用した低エネルギーX線源を製作した。製作した線源から1.5 keVのX線が期待通り放射されることが確認されている。この線源は、較正作業による検出器への悪影響がないことを確認後、XMASS検出器のエネルギー較正に使用される。また、既存のFe-55線源での較正で確認できる約1.65 keVのエスケープピークを用いて、XMASS検出器のエネルギー較正を行った。XMASS検出器の5.9keV未満で行われた初めてのエネルギー較正である。このエネルギー較正結果を利用して、XMASS検出器を用いた暗黒物質季節変動現象の探索を行った。原子核反跳を仮定したWIMP 探索・電子散乱を仮定したmodel independentな暗黒物質探索を行ったが、どちらでも有意な季節変動は観測されなかった。WIMP 探索では、季節変動発見を主張しているDAMA/LIBRA領域の大部分を季節変動を用いて排除した。また、電子散乱探索でもDAMA/LIBRAが観測している季節変動は観測されなかった。 以上の結果を博士論文” Search for dark matter annual modulation in XMASS–I detector ”にまとめた。
|