研究課題/領域番号 |
13J02863
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
三家本 里実 一橋大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日本型雇用 / 若年正社員 / 情報サービス産業 / ITエンジニア |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本型雇用システムの変容を、若年正社員の離職動向と企業の労務管理の変化との関係から考察することで、必要な雇用政策のあり方を検討することにある。その際、主な研究対象として、情報サービス産業におけるITエンジニアを設定し、2014年度においては、以下の課題に取り組んだ。
(1)文献研究:主な研究対象としている情報サービス産業について、産業構造や労働市場の特徴を明らかにしている文献の精査、およびその整理を行った。端的には、大企業における労働問題の射程と、中小企業におけるそれとを複層的に捉える必要性が浮かび上がった。 (2)インタビュー調査:労働者を対象に、労務管理に関するインタビュー調査を実施した。2014年度は13名から聞き取りを行い、2015年度も継続する。ITエンジニアは、仕事の性質から、仕事の進め方や時間配分に裁量が与えられるべきだと考えられ、実際に裁量労働制などの法制度にもそうした趣旨が反映されている。しかしながら、実際の管理のあり方、具体的には上司の指示の出し方や介入の程度、仕事の割り振りについては明らかにされていない。また、産業内での位置づけや、扱っている製品・サービスによって、直接的な管理のあり方も異なる。こうした点を踏まえて、仕事を進める際に、どのように指示を受けるのか、あるいは自身でどのように決めているのかについて、聞き取りを行った。 (3)アンケート調査の準備:産業別労働組合の協力を得て、労働者がどのような理由で離職するのか、あるいは転職を志向するのかを明らかにすることを目的として、アンケート調査実施の準備を行った。生産体制や教育システム、業務内容や労働時間、キャリアの展望など、多角的な視点から分析する。2014年度は労組との打ち合わせを重ね、調査票を作成した。2015年4月から配布し(配布対象は2000名)、同年6月には分析を開始する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
情報サービス産業を対象とした調査、および研究は、おおむね順調に進んでいる。 2014年度から開始した、労働者を対象とした労務管理に関するインタビュー調査と、労働組合からの協力を得た、離職・転職動向に関するアンケート調査を2015年度も継続し、一定の成果をまとめる予定である。 しかしながら、2014年度は上記のように、今後の研究を進めるための準備段階に位置づけられ、学術論文の執筆・発表や学会報告などを積極的に行わなかった。2015年度は、対外的な発表を精力的に行い、研究内容に関する検討を深めたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、主に、(1)労働者を対象とした労務管理に関するインタビュー調査、(2)約2000名を対象とした離職・転職動向に関するアンケート調査に、継続して取り組む予定である。それぞれ、(1)は学会発表を予定しており(2015年6月に開催される社会政策学会)、(2)は分析後、投稿論文の執筆につなげることを目的としている。 関連して、2014年から執筆してきた、情報サービス産業の下流工程における雇用システムに関する分析を行った投稿論文(『一橋社会科学』)の修正を行う。 加えて、労使関係や労働過程に関する文献研究を行い、本研究の理論的な意義付けも行いたいと考えている。
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