研究課題
1. 抗CD69L抗体の作製と抗体を用いた骨髄記憶形成阻害、ならびに気道炎症緩和への影響複数のCD69Lの変異体を作製し、CD69との会合において重要なドメインを解析した。この実験により、CD69LのN末端領域が重要であることが判明した為、この領域の合成ペプチドを抗原とし、抗CD69L抗体を樹立した。この抗体はCD69との会合を阻害する機能抗体であることが、in vitroの解析により明らかとなった。次に抗CD69L抗体を予め投与したマウスに、活性化CD4 T細胞を移入し、その骨髄移行能への影響を調べた。結果、抗CD69L抗体投与マウスでは移行した細胞数が有為に減少していた。また、気道炎症モデルにおいて、抗CD69L抗体を投与した群では、粘膜の産生ならびに気道洗浄液中の細胞数の有為な低下が観察された。以上のことより、CD69Lに対する機能抗体は、CD69との会合をin vitro、ならびにin vivoで阻害し、CD4 T細胞の炎症組織への集積を抑制することが明らかとなった。2. 記憶細胞形成を支持するCD69L^+細胞の同定CD4T細胞は末梢のリンパ節から血管を介して骨髄へ移行することがわかっている。そこで、蛍光標識した抗CD69L抗体をマウスの尾静脈より投与し、マウス骨髄の組織切片をコンフォーカル顕微鏡にて観察したところ、骨髄血管内皮細胞が染色されていた。末梢組織より骨髄へと移行してきたCD4T細胞が、まず始めに接触するCD69L細胞外発現細胞は血管内皮細胞であることがわかった。今回作製した抗CD69L抗体は、CD69/CD69Lの相互作用を阻害することで、肺における免疫反応の抑制ならびにそれに引き続く免疫記憶形成双方ともに抑制した。このことはアレルギー性疾患や自己免疫疾患といった、炎症と免疫記憶が増悪因子となる疾愚において、新規治療法の確立に繋がる重要な知見である。
1: 当初の計画以上に進展している
昨年度までの研究結果は、提出した研究実施計画に沿って計画通り得られている。この度、マウスの気道炎症においてCD69Lの発現が誘導されることが明らかとなった。現在、ヒト組織の慢性炎症時においても、気道炎症同様に炎症特異的なCD69Lの発現誘導が観察されており、また発現細胞がCD69発現細胞と共局在している様子も観察されている。以上のことから、当初の計画以上に研究が進展していると考えている。
現在、論文をまとめており、近日中に投稿予定である。当研究室は、耳鼻咽喉科と共同研究を行っており、ヒトの組織を入手することが可能である。昨年度の研究結果から、抗CD69L抗体の利用は炎症性疾患の新規治療法として有効である可能性が示唆されている。現在、ヒトの慢性副鼻腔炎においてもCD69Lを介した細胞集積を示唆する結果が得られている。今後は、他の炎症疾患も含め解析を進めることで、CD69の分子機構ならびに臨床研究に繋がる知見を得たいと考えている。
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Immuno1. Cell Bio1
巻: 91 ページ: 524-531
10.1038/icb.2013.36