本研究の目的は、サーバシステムにおけるアプリケーション実行時の電力効率を最大化することである。具体的には、数十個のプロセッサ・コアを搭載したメニーコア・サーバシステムにおいて、並列アプリケーションを実行する際の性能向上および消費電力の削減を目指している。サーバシステムの性能と消費電力は、演算を行うプロセッサとデータを格納するメモリシステムの性能と消費電力に大きく左右されるため、本研究の目的を達成するためにはその両方を考慮した電力効率最適化手法が必要不可欠である。 去年度までは、並列アプリケーションの特性に応じたハードウェア資源の管理手法を提案してきた。
本年度は、並列アプリケーションの実装に着目し、特に近年ソーシャルネットワークサービスや交通管理サービス等に広く応用されるグラフ解析アプリケーションの実装に焦点を当てた。このアプリケーションは莫大な量のデータに対する解析を行うため、数百から数千ギガバイトのメインメモリを必要とする。そのため、メインメモリの性能と消費電力がより重要となる。本研究では、マルチコア・シミュレータとメインメモリ・シミュレータを用いてグラフ解析アプリケーションのメモリアクセスパターン解析を行った。その結果、メインメモリのバンク並列性は効率的に利用されているものの、そのメモリアクセスのほとんどは row-buffer ミスおよびコンフリクトであることが明らかになった。つまり、メモリアクセスが row-buffer ヒットとなる場合に比べ、メモリアクセスにより長い時間を要し、より多くの電力を消費しているということが分かった。そこで、現在、該当アプリケーションのアルゴリズムとデータ構造を分析し、メモリアクセスを row-buffer ヒットとすることで性能向上および消費電力削減を狙うメインメモリ上でのデータ配置を検討している。
|