研究課題
本年度は、国民にとってのエリートスポーツ政策の価値を仮想市場法により推計した。国際競技大会における選手やチームの活躍(エリートスポーツサクセス)が国民にもたらすポジティブなアウトカム(誇り、幸せ等)は公共財とみなすことができる。公共財には市場が存在しないので、公共財を購入する機会のある仮想的市場を提示し、エリートスポーツサクセスの向上という政策の改善のために、所得を減らしてでもより高い効用を得るために支払ってよい最大の額(支払意志額 : WTP)を問うた。全国の850名を性別、年齢階層が平成22年国勢調査における人口分布と均等比率になるように層化した上で、対象者を無作為に抽出し、インターネット調査を実施した。調査は、3時点における追跡調査とすることで、先行研究において課題とされている時間的信頼性を検証することを試みた。スポーツ基本計画における政策目標(夏季オリンピックの金メダルランキング5位、冬季10位)を達成するためのエリートスポーツ政策拡充に対するWTPを二段階二肢選択方式で問い、その他WTPを規定する社会心理要因、人口統計学的要因を尋ねた。分析にはパラメトリック法を用い、ロジットモデルおよびワイブルモデルにより母集団WTPを推計した。その結果、エリートスポーツ政策に対するWTPは一成人あたり405円で、総計約422億円と推計された。これは文部科学省が計上している国際競技力向上関係予算を上回る価値を国民が認識している可能性を示した。また、エリートスポーツ政策に対するWTPは、3時点において有意な変化がなく時間的信頼性を有した値であることが縦断研究により示された。
2: おおむね順調に進展している
研究計画どおり、国民にとってのエリートスポーツ政策の貨幣価値評価が分析されたため。
今後は、当初の計画を微修正し、エリートスポーツ政策の価値評価と関連のある社会心理要因を分析していく予定である。また、エリートスポーツ政策に対する国民の受容態度の形成メカニズムへと研究を発展させていく。なお変更は最小限であり、研究計画の目的を達成する上で別段の支障はない。
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スポーツ産業学研究
巻: 23(2) ページ: 145-154
Asian Sport Management Review
巻: Vol.7 ページ: 61-98
体育・スポーツ政策研究
巻: 22(1) ページ: 25-34