研究課題/領域番号 |
13J02944
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
馬込 大貴 東京大学, 医学部附属病院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 全骨髄照射 / TMI / 赤色骨髄照射 / DECT / 放射線治療 / 白血病 / 国際協力研究 / アメリカ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、過去の放射線治療データベースの情報を積極的に利用する高精度放射線治療計画支援システムを開発することである。本年度は、ミネソタ大学と協力することで全骨髄照射症例におけるマルチモダリティ画像データベースの作成と画像データベースの情報を積極的に活用する赤色骨髄照射法の提案を行った。 全骨髄照射症例5例と7献体において、全身のDECT(deal-energy CT)を撮影し、Basis Material Composition法に基づき、赤色骨髄と黄色骨髄領域を抽出する手法を開発した。領域抽出の際に必要なパラメータは、献体の腰椎を病理標本にしたHistologyデータを教師データとして学習させた。献体のHistologyデータと、DECTに基づく黄色骨髄領域を比較したところ、両者の相関係数は0.861となった。さらに、DECTで同定された赤色骨髄領域のみに強度変調放射線治療に基づき線量を集中させる「赤色骨髄照射法」を提案した。結果として、Planning target volumeに対するhomogeneity indexの値は赤色骨髄照射において有意に改善し、リスク臓器(肺、耳下腺、腎臓、腹膜領域)に対しては、有意に線量を低減することが可能であった(P < 0.01)。提案手法に基づいた赤色骨髄照射を行うことで、リスク臓器の線量を保ったまま、赤色骨髄の線量増加を行うことができ、白血病患者の治療成績向上に寄与できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度、ミネソタ大学と協力することで白血病患者における全骨髄照射症例のマルチモダリティ画像データベースの作成と画像データベースの情報を積極的に活用する次世代型放射線治療計画法の提案を行った。全骨髄照射法は、未だ日本では実施されていない最先端の治療法であるが、提案手法に基づいた次世代型治療法である赤色骨髄照射を行うことで、リスク臓器の線量を保ったまま、赤色骨髄の線量増加を行うことができ、白血病患者の治療成績向上に寄与できる可能性がある。本研究を通じて日本での臨床試験開始が期待される。 また、ミネソタ大学を通じて、欧州3カ国の施設とも共同研究をスタートしており、国際協力研究として世界をリードできる可能性がある。これまでの研究成果は、現在4報の英語論文として執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
ミネソタ大学が中心となって行っている全骨髄照射臨床治験グループInternational consortium of total marrow irradiation (ICTMI)と協力することで、4カ国の施設(アメリカ、フランス、イタリア、ポーランド)において全骨髄照射症例の画像データを収集する。治療計画用のCTと治療直前の(MVCT: mega-voltage CT)画像を収集し、各施設における位置ずれ量の統計解析と治療計画情報の施設間差を評価する。さらに、次年度に計画されているICTMI workshop(Paris, France 2015年5月)において成果発表を予定しており、協力施設数の更なる増加を目指し、国際協力研究として解析を行う。
今後は、今年度開発したデータベースを国際化し、実際に国際臨床治験グループ(ICTMI)での使用を目指し、改良を進める。今年度の研究成果は、現在、4報の英語論文として執筆中である。
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