研究課題/領域番号 |
13J02959
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鈴木 明大 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | X線顕微鏡 / タイコグラフィ / コヒーレントX線光学 |
研究実績の概要 |
本研究は、X線タイコグラフィを装置開発、データ解析の両面から高度化させ、弱散乱物体の高分解能3次元観察を目的としている。本年度の成果を述べる。 1 マルチスライスX線タイコグラフィの高度化 試料の厚みの影響による分解能の制限を解決する手法として、我々はマルチスライスX線タイコグラフィを提案し前年度に実証した。本年度はより複雑な多層構造を有する試料の観察を目的として、試料を歳差運動させながら回折パターンを取得するプリセッション測定を提案した。計算機シミュレーションによる基礎検討の後、SPring-8で実験を行った。その結果、4層からなる厚さ210umの試料を面内分解能50nm、光軸方向の分解能10umで観察することに成功した。 2 暗視野X線タイコグラフィ X線タイコグラフィは明視野と暗視野の散乱強度を同時に取得する必要がある。弱散乱物体を観察する場合、暗視野領域の回折強度は明視野領域と比較し非常に弱い。そのため、現在利用可能な検出器の強度ダイナミックレンジでは微弱な回折強度を取得できず、再構成像の分解能、感度が制限されるという問題がある。そこで我々は、回折パターンの強度ダイナミックレンジを圧縮する手法として、インラインホログラフィとX線タイコグラフィを組み合わせた暗視野X線タイコグラフィを考案した。試料の上流に参照物体を配置することで、回折パターンに加えてインラインホログラムを取得する。検出器の直前にダイレクトビームを遮蔽するビームストップを配置し、回折パターンの強度ダイナミックレンジを圧縮する。また、ビームストップによって失われた情報はインラインホログラムによって補完する。計算機シミュレーションの結果、試料の最大位相変化量が0.01radで、再構成像のピクセルサイズが10nmの場合、従来手法と比較して検出器に必要とされる強度ダイナミックレンジが1/1000になることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
暗視野X線タイコグラフィを利用すれば、現状の検出器で弱散乱物体の高分解能観察が可能であることが計算機シミュレーションによって示せたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究に基づいて、生体試料の3次元高分解能観察に向けて研究を進める。具体的には、プリセッションマルチスライスX線タイコグラフィを利用して、テスト試料ではなく実試料の3次元イメージングを目指す。また、弱散乱物体の観察が容易になることが示唆されている暗視野X線タイコグラフィの実証実験を行い、磁性細菌の高分解能内部構造解析へと展開する。
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