本研究の目的は、中国西南部のミャオ族女性による民族衣装とその製作技術の共有や伝達が、いかにローカル社会の社会関係に組み込まれ、同時に、それらがグローバルな流通や観光化、出稼ぎ者の増加や義務教育の普及といった社会経済的変容の影響をどのように受けているのかを明らかにすることであった。 採用第2年度目の研究実績は、まず学術雑誌『文化人類学』への論文掲載であった。その内容は、『文化人類学』第79巻3号、pp. 305-327(2014年12月)に、論文「衣装がつなぐ母娘の『共感的』関係:中国貴州省のミャオ族における実家・婚家間の移動とその変容」として掲載されている。また、本研究課題の内容そのものである博士論文の全草稿の執筆もまた主な研究実績の一つである。これらの論文をもとに受入研究者の指導を受けただけでなく、台湾交通大学にて研究発表を行い、当該研究者の指導も受けた。 また、ミャオ族の民族衣装の商品化がそもそもどのように始まったのかといった、これまで明らかにできなかった点を、中国での元貴州省美術家協会幹部等への聞き取り調査によって補填することができた。 こういった海外での研究発表、現地調査に加えて、日本国内におけるミャオ族民族衣装の展示の状況についても調査を行った。具体的には、「苗(ミャオ)族刺繍博物館」や「神戸ファッション美術館」、「文化学園服飾博物館」を訪問し、展示品と関連書籍を分析した。
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