研究課題/領域番号 |
13J02980
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田ノ口 正悟 慶應義塾大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | Herman Melville / Gothic / Asia / Transpacific / "The Paradise of Bachelors and the Tartarus of Maids" / "The Piazza" / Japan |
研究概要 |
2013年度の研究の成果は大きく3つに分けられる。それは、1、2度の口頭発表、2、1本の英語論文執筆、3、2度にわたる海外出張である(1、と2、については本報告書の〔13. 研究発表〕を参照のこと)。そのそれぞれが、わたしが研究の目的として掲げた、アメリカン・ゴシックという文学ジャンルをアジア・太平洋という観点から読み直すために不可欠であったのみならず、今後の新たな課題を与えてくれた。 具体的に研究成果とその意義を述べる。まず、1、と2、についてだが、これらの論文と口頭発表によって、ハーマン・メルヴィルのゴシック的想像力が太平洋という舞台、特に日本を射程に入れることで発揮されていたことを明らかするのみならず、実はその想像力がアメリカと日本の関係性のみならず、アメリカとヨーロッパの関係性をも浮かび上がらせていたことを証明した。これらの課程で、本年度の研究実施計画に掲載した、アメリカ文学とゴシック、そして太平洋の関係を論じた基本文献を分析し、メルヴィル以外の作家の作品にも広くあたることができた。また3、についてであるが、2013年6月と2014年3月に2度アメリカを訪れることで、前者では、メルヴィル国際学会に出席して多くの研究者から刺激を受けることができたし、後者では、彼のゆかりのちであるボストンとニューヨークを訪ねることで、メルヴィルが19世紀半ばにおいてどのような歴史的・文化的背景にあったのかを探ることができた。 特に3月にボストンとニューヨークを訪れたことで、メルヴィルと他作家の繋がりのみならず、彼を当時の文壇に紹介したエヴァート・ダイキンクの日本では入手できない資料を多々収集することができたことは、今後の研究を進展するために極めて意義深いといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メルヴィルのゴシック的想像力について、「研究の目的」で記載した基礎文献を収集しそれらを分析できた上に、国内での論文執筆を1本に口頭発表を2回行った。さらに、アメリカに赴き実地調査を行いつつ、日本では入手困難な資料を収集することもできた。しかし一方で、「研究の目的」にあった、イギリス文学との比較にまで言及できなかったという意味で、当初の計画以上に進展しているとは言いがたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題は次の2点である。1、上述したように、2013年度には取り組むことのできなかった、アメリカン・ゴシックという文学ジャンルの形成とイギリス文学・文化における怪奇との関連づけに関して調査を進める必要がある。そのため、2014年度はメルヴィルが実際に行ったとされるイギリスはロンドンへの現地調査と資料収集などを視野に入れている。2、アメリカで収集した資料の細かい分析を行い、それらを含めて論文の執筆あるいは口頭での発表を行う。
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