研究課題/領域番号 |
13J02987
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長基 康人 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | iPS細胞 / 細胞シート / キメラマウス / 再生医療 |
研究概要 |
これまでに作出されてきたヒトiPS細胞由来肝細胞を有したキメラマウスは、ヒト凍結肝細胞を移植した場合と比較して、生着効率が悪いことが問題とされている。そこで本研究では細胞シート工学技術を用いて、ヒトiPS細胞由来肝細胞シートを移植する検討を行った。まず、温度応答性培養皿を利用してヒトiPS細胞由来肝細胞シートを形成できるのかを確認した。その結果、単層のシート状にヒトiPS細胞由来肝細胞を回収できることがわかった。続いて、ヒトiPS細胞由来肝細胞シートを移植した際の安全性および、移植後早期の生着効率に関しての検討を行った。その結果、ヒトiPS細胞由来肝細胞シートを移植したマウスからは肝臓のみ、ヒトgenomeDNAが検出された。一方、ヒトiPS細胞由来肝細胞懸濁液を従来法である脾臓経由の方法で移植したマウスでは、移植標的臓器である肝臓のみならず、脾臓、胃、大腸からヒトgenomeDNAが検出された。さらに、移植後2週目におけるマウス血清中ヒトアルブミン濃度を解析したところ、ヒトiPS細胞由来肝細胞シートを移植したマウスからより高い濃度のヒトアルブミンが検出された。以上の結果から、ヒトiPS細胞由来肝細胞シートは初期生着効率が高く、移植標的部位以外への分散も少ないことが示唆された。そこで、四塩化炭素を致死量投与した急性肝不全モデルマウスにヒトiPS細胞由来肝細胞シートを移植することで、再生医療への応用性を検討した。その結果、擬移植群と比較して、ヒトiPS細胞由来肝細胞懸濁液移植群では生存率に有意な上昇は認められなかったのに対し、ヒトiPS細胞由来肝細胞シート移植群では有意な生存率の改善が見られた。したがって、このヒトiPS細胞由来肝細胞シート移植法は移植後の細胞生着位置を正確に制御することが可能であり、移植後早期における生着効率が優れていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は従来の脾臓経由移植法と比較して、より高い生着効率を示す移植法の開発に成功した。この移植方法は生着位置の制御にも優れているため、ヒト肝キメラマウスの作出のみならず、再生医療への応用も可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度には、本年度において開発した新規移植法を用いて、肝障害免疫不全マウスにヒトiPS細胞由来肝細胞を移植し、長期的な観察を行うことで、高い生着効率を示す新規ヒト肝キメラマウスの作製を試みる。
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