本研究の目的は、アフリカの農村女性が近年、新たな現金稼得活動を基盤に、いかにして従来の地縁・血縁・姻戚を基礎にした社会関係とは異なる新しい社会関係を形成し、それを活用することで自らの生活の保障や潤いを得ているかを明らかにすることである。本年度も引き続き、アフリカ農村における社会経済変容に伴う、女性同士のネットワークや経済活動、そこに見出されるエージェンシーをめぐる研究を、文献研究と口頭発表・論文執筆によって進めた。現地調査は、ザンビア南部州モンゼ県でおこない、比較調査として、日本の徳島県西部山間地で共同研究をおこなった。 ザンビアのモンゼ県における調査は、女性の友人ネットワークとの比較分析をおこなううえで不可欠な、生業活動における社会関係に関する分析を中心に取り組んだ。主生業である雨季の農業活動のなかで、栽培から収穫までの全作業を各家庭の女性が担い、その収穫物の自給余剰分が女性の個人的な現金収入となる唯一の作物であるサツマイモの栽培を対象に、多様な品種の由来や苗の入手先などに関して聞き取りをおこなった。徳島県では、サツマイモ・サトイモ・コンニャクイモ・ジャガイモの貯蔵技術や食文化について参与観察と聞き取りをおこない、貯蔵技術の衰退と地域の農業史や生活史との関係、今日におけるイモ類の貯蔵技術保全の意義について検討した。 モンゼ県と徳島県に共通するサツマイモの貯蔵技術(イモ穴貯蔵庫や切り干しイモ)に関する比較分析では、農村女性の活動とそのネットワークが、イモ穴を保有する世帯だけでなく地域における種イモの保管、在来種の保全、在来種に関連する食文化の保全、災害時に脆弱性の高い世帯における食糧安全保障に大きく貢献していることを明らかにした。
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