研究課題
大腸癌における代謝特性および癌幹細胞の解明を行うにあたり、癌特異的に発現するPKM2に着目した。PKM2は代謝酵素であるが、核内移行し転写活性の制御にも関与しており、重要機能であると考えられている。大腸癌が浸潤する過程で、細胞レベルでは上皮間葉移行(EMT)という変化を通じて、運動能、浸潤能を増し周囲へと浸潤していく。EMTは癌幹細胞と関連することも判明している。これまでの研究報告において、PKM2の核内機能がEMTの誘導に必要であることを示してきた。具体的には、EGFとTGFβ1で大腸癌細胞株SW480にEMTを誘導すると、PKM2の発現が上昇して核内移行すること、PKM2をノックダウンするとEMTが抑制されること、PKM2過剰発現によりEMTが促進されることを示した。また、PKM2が転写因子TGIF2と核内で相互作用し、その機能を抑制していた。引き続き、TGIF2が司るエピジェネティクス制御機構を明らかとすることができた。EMT誘導過程において、PKM2, TGIF2ともにヒストン脱アセチル化酵素HDAC3と相互作用し、HDAC3が標的とするアセチル化H3K9と、E-cadherin promoter領域の結合量を低下させていた。つまり、PKM2, TGIF2, HDAC3の複合体が形成されることによりE-cadherinがヘテロクロマチン状態となり転写活性が抑制されてEMTが誘導されることが解明された。大腸癌切除標本の免疫染色では、PKM2高発現群とリンパ節転移・遠隔転移に正の相関を認めた。長期予後に関しては、GSE17536を基に解析したところ、PKM2高値群において最も予後が不良であった。EMTは癌幹細胞と深く関与する悪性形質であり、癌幹細胞の機能解明につながる非常に重要な発見をすることができた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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