研究課題/領域番号 |
13J03043
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
河村 瑛子 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員DC2
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キーワード | 古俳諧 / 近世文学 / 貞門俳諧 / 談林俳諧 / 連想 / 異国 / 出版 |
研究概要 |
古人の世界観を把握することは、日本文学研究の主要な課題の一つであるが、こうした事柄は当時の人々にとって自明であり、通常は文献上に記されない。その中にあって、貞門俳諧の所産である連想語辞書『俳諧類船集』(延宝4年刊)は、同時代人の共通認識を反映した稀有な資料である。本書の注釈作業には、連想を実践した貞門・談林の古俳諧資料の参照が不可欠だが、その大部分は未翻刻のままにある。そこで、本研究では、古俳諧の資料基盤を整備して用例を検索駆使することにより、『類船集』の連想語のネットワークを明らかにし、そこから文学作品の新たな解釈を目指す。 1)まず、目録類により、寛永から天和末年に至る約60年間の古俳諧作品一覧を作成した。次に、言葉の連想関係を探る上で重要な連句集・付句集について、全国の文庫・図書館より写真を取り寄せ、パソコンを用いて翻刻を行った。難読部分や書誌的な問題を有する書については適宜原本の調査を行った。その成果として、天理図書館蔵『徳元玄札両吟百韻』が、所在不明の噺本、上方版『私可多咄』を抄録することを指摘し、「上方版『私可多咄』考」(『近世文芸』100号、2014年7月刊行予定)として論文化した。また、松永貞徳作「壺の名に」百韻の諸本の検討から、その複雑な改稿過程を解明し、「貞徳作「壺の名に」独吟百韻の諸本について」(査読中)として論文化した。 2)近世前期の重要作家をはじめとした文学作品について、解釈上の問題点を整理した。その上で、『類船集』中の重要語彙を選定し、1)で蓄積したデータを駆使して注釈的研究を行った。「古俳諧の異国観―南蛮・黒船・いぎりす・おらんだ考」(『国語国文』第83巻第1号、2014年1月)では『類船集』「南蛮」条の注釈を発端として西洋関連語彙を分析し、日本人の異国観を解明するとともに、俳諧史上重要な用語である「おらんだ流」の意義についても明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
古俳諧作品目録の作成、古俳諧全文データの集積、『俳諧類船集』重要語彙の注釈作業を遂行し、各工程において得られた成果を論文として発表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
・古俳諧作品の全文データの入力および『俳諧類船集』重要語彙の注釈作業をさらに進め、その成果を文学作品上の諸問題と結び付けて考察する。 ・写真や原本の調査によって得られた情報は、前年度に作成した古俳諧作品目録にも反映させ、より正確かつ充実した目録を目指す。同一連句が複数の書に収められる場合は、相互に参照できるよう注記する。
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