研究課題
活動銀河中心核における相対論的ジェットの生成機構解明は現代天文学における究極的課題の1つである。本課題では最近傍の巨大ブラックホール(BH)ジェットM87を対象に、BHから10~10000シュバルツシルト半径(Rs)における速度場や構造の精密調査を実施し、世界に先駆けて磁場駆動型ジェット生成理論の直接検証を目指す。本目的達成に向け、高い解像度を備えた日本のVLBI専用アレイVERA、高い感度を実現する欧州VLBIネットワーク(EVN)を用いた高頻度モニター、更には日伊共同VLBI観測網、米国VLBI観測網VLBAを用いたBH最近傍の撮像観測を実施する。今年度は前年から続くイタリアIRA滞在が10月で終了し、後半11月からは国立天文台に拠点を移して研究活動を行った。主に2012~2013年に観測したVERAおよびEVNデータを解析、整理、統合する作業が中心であった。特に当初の予定にはなかったのだが、GeVガンマ線望遠鏡Fermiや米国TeVガンマ線望遠鏡VERITASとの同時コラボレーション観測が実現し、2012年に起こったM87で起こった超高エネルギーガンマ線フレアに同期して、VERAでモニターしていた中心核から非常に強い電波増光を検出することに成功した。本結果は、これまで長らく論争が続いていたM87からのガンマ線が、BHから僅か数10Rs以内の領域に起因することを決定的にした大変重要な成果である。本成果は国内外多くの研究会、及び査読論文(うち筆頭著者1報)にて発表した。日伊共同VLBIについては前年度フリンジ未検出に終わった教訓を踏まえ、最善の準備を尽くして2014年2月に2度目の試験観測を実施した。現在相関処理を実施中であり、2015年度前半中には結果が得られる見込みである。尚、本研究の土台である研究代表者の博士論文は平成26年度井上科学振興財団研究奨励賞を受賞した。
2: おおむね順調に進展している
前年度に続き本年度も当初の計画通り概ね順調にM87観測データの取得、解析が進んでいる。更にはGeVガンマ線望遠鏡Fermiや米国TeVガンマ線望遠鏡VERITASなどとの国際多波長同時観測が実現するなど、当初の予定を上回る国際協力を達成することができている。日伊共同VLBIについては前年度の経験を踏まえ2回目の試験観測を実施した。現在は相関処理待ちの状態ではあるが、フリンジ検出に向けて可能な限りのバグ修正を行い、着実に前進している。
VERA/EVN観測については現在は観測データの解析の多くが完了し結果が貯まってきたという状況である。磁場駆動モデルが予想するような加速の兆候は確かに見え始めており、VERA/EVNによる高頻度モニターの努力が実を結びつつある。最終年度はこれらをモデルを比較考察し、査読論文にまとめて総仕上げとしたい。日伊共同VLBIについては、今年度観測したデータの相関処理が2015年4月-5月頃に行われる予定である。フリンジ検出を成功させ、本格的な科学成果を創出したいと考えている。
平成26年度(第31回)井上科学振興財団 井上研究奨励賞 受賞
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 3件) 備考 (4件)
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