研究課題/領域番号 |
13J03096
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
廣瀬 茂輝 名古屋大学, 現象解析研究センター, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | B→D*τνのτ偏極度測定 / MCP-PMTの大量生産 |
研究実績の概要 |
本年度は、τのハドロニック崩壊を用いたB→D*τνの崩壊分岐比測定およびτレプトン偏極度測定を目指し、まず高い効率で信号事象を再構成できる荷電B中間子モードに焦点を当てて、崩壊をシミュレーションした疑似データを使って解析手法の確立を目指した。
τのレプトニック崩壊を用いた先行研究との比較において、本解析ではτレプトン偏極度の測定が可能となる一方で、信号の終状態粒子としてハドロンのみを含むために背景事象を排除しにくいという難しさがある。本年度の研究では、信号事象の特徴を表す変数に対する選別条件を丁寧に最適化した結果、τのハドロニック崩壊を使った場合でも統計的に有意なB→D*τν信号事象を得られることを示した。さらなる信号再構成効率の向上手法として、当初は信号選別にニューラルネットワークを用いた多変量解析を想定していたが、新物理のB→D*τν崩壊への寄与が存在した場合、力学的な分布の変更を受けることによる多変量解析への見積もりが難しいという問題があった。本研究では、最適化した信号選別条件を使うことで、新物理の影響を抑制しつつ十分な信号事象を得られることがわかった。これらの成果を、12月に行われたBelle実験グループ物理解析ミーティングにて報告した。さらに背景事象の抑制や、具体的な信号事象抽出手法の確立を行い、荷電B中間子モードにおいて期待される崩壊分岐比およびτレプトン偏極度の統計精度を見積もり、2015年6月に行われた研究会で報告した。
また、Belle II実験用粒子識別装置TOPカウンターに使うための全500本以上のMCP-PMTの量産を、本年度でほぼ完了した。これは高エネルギー実験のために大量のMCP-PMTを量産した世界初の事例であり、MCP-PMT全数の基本性能測定から得られた知見およびこれらのMCP-PMTをTOPカウンター試作機に取り付けて行ったビームテストの結果を、国際会議TIPP 2014にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
B→D*τν信号に対する背景事象の抑制が難しく、信号選別条件の最適化に時間がかかった。従って、2016年3月末に完成する予定だった信号抽出手法の確立が遅れたが、6月のBelle実験グループミーティングおよびその前後の研究会にて発表に至った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、B中間子のハドロニック崩壊からの背景事象に由来する系統誤差の見積もりが重要となる。2016年度には系統誤差の見積もりを完成させ、実データを使った測定に移行する。最終的に、B→D*τν崩壊の崩壊分岐比とτレプトン偏極度を実データから抽出する。
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